第2話 エミホ

東山という土地は京都らしい。エミホはスマホから目を上げて呟く。


「そうだ、京都いこう」


昔むかし、そんなコピーが流行ったらしい。エミホはリアルタイムに見たらしい。

そう言ったのはエミホがスマホから目を上げてから、4902070秒くらいあと。ウソ、ごめん。本当は時間なんて知らないし。


とにかく、エミホは京都に行きたかった。だから新幹線に乗ればいいものを、床に魔法陣を描きだした。


「エロイムエッサイム・エロイムエッサイム・われは求めたり求めなかったり」


適当な呪文をつぶやいてみる。エミホはいつも適当に呪文を唱える。だって、知らないし。

魔法陣はなかなかの出来だという、もっぱらの噂。だれが噂してるかは今世紀最大の謎だけど。


とにかく、魔法陣は大成功で、適当な呪文は発動しなくて、エミホは京都には行けない。

だって、エミホは脱出できない部屋に閉じ込められてるんだもん。





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