第66話 封筒

昔は母の言い付けを破ってばかりだった。


「すぐに開けちゃだめよ」


今際の際に渡された封筒。

あの日の母と同じ歳になり、感傷に浸りつつ封を切った。


「痛っ」


指から滴る血が、中の紙に落ちる。


「なんで言う通りにするのよ…」


懐かしい母の声と、カタカタ骨を鳴らす音が聞こえた。

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