夜行


薄い雲がかかるある夜の月


美しく揺れる黄金色の麦も今宵は静かに寝ている


急勾配の坂をトトトっと降りて夜を泳ぐ


朝は雀が、夕は烏が、夜は蛙が夢を歌う


子どものころ通った小学校も、昔遊んだ用水路も、


遠い昔のようだけど、それでも、そこにも君はいない


そこの家の藤棚は月明かりに照らされてこんなにも綺麗だというのに、


久しぶりに行った図書館の秘密の屋根の上はどんなに気持ちよかっただろう


今日の、この夜だけは私は大好きだ


解けていくこの柵のように、私もこの夜に溶けていきたい


あぁ、もう時間だ


おやすみ、みんな


次に私が来るときもきっとこの夜で会おうね


それまでは夢をみて、朝日とともに君を待つよ


きっとこの夜に続きがあるから

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