第226話 格好いいよ。また惚れ直しちゃう。

「おうよ!来たぜマリオン!」

そう言ってカムカはニカっと笑う。


「何で?」

「んー、キヨロスが俺と悪魔の戦いが見てみたくなったっていきなり呼びつけてさ、ずっとムラサキさんの力で隠されていたからマリオンには見えなかったらしいぜ?

それでマリオンがピンチになったら「行けカムカ!」って送り込まれたんだよ」

カムカは私を抱きかかえたままヒラヒラと悪魔の攻撃をかわす。


「そんな…、本当に非常識な奴。ツネノリ達の為に出てきただけなのにカムカまで呼び付けて」

「まったくだ、それでもマリオンと一緒に戦えるのは嬉しいし、何より死なないんだろコイツ?

それでいて強いんだろ?

やりがいあるよな。この戦いで俺達はまた強くなる!」


「うん、そうだねカムカ!」

「よし、離れて見てろよな」

そう言ってカムカは私を安全な場所におろすと悪魔に向けて歩き出す。

まるで何もないみたいに歩く。

その力強い後ろ姿は何年経っても愛おしい。



「よっしゃ!次は俺だ!きやがれクロ助!」

悪魔はカムカを狙って大振りの一撃を放つ。

私は回避して腕を破壊するが私のカムカは違う。きっと…


「唸れ筋肉!!オラァ!!」

そう言うと放たれた拳に向かって拳を放つ。


約20年前の戦い以来「アーティファクト・キャンセラーより硬くなければ問題無し!」と言って何でも殴るカムカは案の定、悪魔の拳を殴って受け止めた。

流石にこれは大丈夫かと心配になったが、要らぬお世話だった。

悪魔は腕から血を吹き出して打ち負けていた。


「よっしゃ!次だ次!」

そう言って走り出すと巨大な右スネに向かって「吼えろ筋肉!」と言って蹴りを放つ。


悪魔に痛みがあるのかわからないが蹲った所をカムカは見逃さない。

器用に肩に飛び乗って頭に向けて拳を放つ。


ある程度放った所で悪魔が立ち上がってカムカを狙い始める。


「降りるか」と言って降りるカムカ。

そして着地に合わせて悪魔は閃光を放ってきた。


「甘い!【アーティファクト】!」

カムカは右腕の「炎の腕輪」を使って全身に火を纏う。


あの炎は光の盾に代わる何かが欲しいと言ったカムカが辿り着いた防御法。

「いつもマリオンに守ってもらうのもなぁ、自分で防ぎたいよなぁ」と言いながら試行錯誤を繰り返していた。


神の使い、道を示す者と言うカムカの師匠に報告したら「炎を知っているカムカだからできるんだよ」と褒めてくれていた。


あの閃光すら防ぐカムカの炎。

この炎は悪魔に引火するのかな?

そんな事を考えた時にカムカも同じ事を考えたのだろう。

閃光から抜け出してまた悪魔の上に登って拳を当て続ける。


火力が弱まれば再度火をつける。

殴る先から治っていた怪我も段々と治りが悪くなってきた。


アイツの狙った状態だ。


そしてカムカの炎は悪魔に引火した。

物凄い勢いで燃える悪魔の身体。


満足そうに降りてきたカムカは「一丁あがり!」と言うと私に向けてニコッと笑う。


「格好いいよ。また惚れ直しちゃう。それに鎧を着ていなかったら抱きついていたよ」

「んじゃあ早く終わらせて帰らないとな」


「そうだね」

「どうする?もう少し休むか?」


「ううん、今度は2人がかりで倒したらどうなるかコンビネーションの練習をしようよ」

「お、それいいな。じゃあこっち来いよマリオン」

カムカは右手を私に向けて呼んでくれる。

私はその手に向かって立ち上がって前に進む。

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