第109話 生き返った後ってどうするの?
私はメリシアを連れて屋上にやってきた。
時間はあまりよく分からないが15時前にはここに来たはずだ。
ああ、自宅での感覚になっていたが、うちは子沢山なのでこの時間から夕飯の準備を始めないと駄目だったが、普通はもっと後でもいい。
ジチ呼ぶのもう少し後でも良かったのかもなぁとか思ってしまう。
「メリシア見える?」
そう言って私は「魂の部屋」を掲げる。
「はい、マリオンさん。とても空が高くて綺麗です」
「ふふふ、ありがと。ここがゼロガーデンだよ」
「ここでツネノリ様が育ったんですね。私は来られないかと思っていたから死んでしまったのは残念ですが、ツネノリ様の育った世界に来られたのは嬉しいです」
「ふふふ、メリシアは本当にツネノリが大好きなんだね」
「え?」
「え?」
え?って何?
「私、…ツネノリ様もですがこの気持ちが何なのかよく分からなくて、それで2人で確かめて行こうって話していたんです」
そしてメリシアはツネノリに会ってから死ぬまでの事を話してくれた。
2人とも不器用だけど聞いていて嬉しくなってしまう付き合い方をしていて驚いた。
「ねえ、私の話するね。私は元々人形だったの。下に居たお爺ちゃんがお爺ちゃんの孫のマリーを真似て作ってくれたの」
「え?マリオンさんは人形だったんですか?」
「そうだよ。それでね意思を持った私は下に居たあの非常識男、怒りん坊のアイツに恋をした」
「え?えぇぇ?」
「でもアイツは変わったから私はそんなに好きじゃなくなったの。そして一緒に旅をしていた仲間だった今の旦那様が好きになってね。
でも人形と人間の恋なんて無理でしょ?
それでも好きだったからずっと一緒に居たくて好き好き言っていたんだよね」
メリシアは黙って私の話に耳を傾けてくれている。
「それである日、ツネノリの母、ルルに会ったの。ルルの研究の一つに無機物の有機物化って言うらしいけど平たく言うと石を肉に変えたりする研究があったから、私は人形から人間にして貰ったの。それで私は人間になれたし、メリシアはそれを使って人間に戻るんだよ」
「人形が…人間に…」
「そうだよ。その時私の願いを反映してこの身体が出来たんだ。この身体はね。元になったマリーはその時13歳。私の旦那様…カムカって言うんだけどカムカは25歳。その年の差を埋めたかったの。カムカの横に居る人間の私。手足が長くて背が高くて、後は人間になる時身近に居たお姉ちゃんをイメージの参考にしたの」
「イメージの参考?」
「そう。人間化の時に一番大事なのは自分がなる人間の姿を意識しながら変化する事だよ。
だから私はね旦那様に釣り合うように願ったの。お陰様で元になったマリーよりスタイルもいいし背も高い。そして強くなった」
「強く…」
「そう、私の旦那様はこの世界を救う勇者様だから」
「勇者様はツネノリ様のお父様のツネツギ様では?」
「ああ、ツネツギは世界が間違って選んだ勇者様でカムカは神様の使いが選んで育てた勇者様なんだよ。
んー、なんて言うんだろう?2人の勇者って感じかな?」
「はぁ…」
「おっと、話がそれたね。とにかく人間化に必要なのはイメージで、イメージがあれば今のメリシア以上の存在になる事も可能って事さ」
「私以上の私?」
「いきなりだけどさ、生き返った後ってどうするの?」
「え?」
「まだあまり考えていないかな?たださ、この先もツネノリと居たい時にメリシアはどうしたいのかな?って思ってさ」
「私…ですか?」
「そう、これからもツネノリに守ってもらうか、それともさ…ツネノリと一緒に戦うかとかさ」
「戦う?私がですか?」
「そうだよ。もしメリシアが戦えるだけの力を願っていればその思いは人間化の際に奇跡となって起きる。私がそうだったからね」
「マリオンさんも…」
「そうだよ。元々戦闘用の人形で戦闘力はあったけど、人間化の時に願ったからだと思う。今は本気を出したらカムカと同じくらい強いし、ツネツギにも勝てると思う。
あ、あの非常識男には誰も勝てないと思うから考えないでね」
そう言って私は笑う。
「マリオンさん…私…」
「あ、答えは急がないでいいよ。私もツネノリが自分の子供と同じくらい好きだから応援したいだけだし、同じ境遇になるメリシアを応援したいだけのお節介だから。私も準備を済ませておくからさ。私の方法がうまくいけば身体が出来上がるまでに答えをくれれば大丈夫!」
そう言って私は空を見て「神様―、聞いていたでしょ?どうかな私の考え?」と言う。
そうすると背後に神様が立っていて「全く…、みんなには敵わないな。マリオンの考えもとても素敵だ。僕は反対しないよ。そしてマリオンの考えは理論上問題ない。後はペックがやってくれるかどうかだね」と答えてくれた。
じゃあ私は準備を進めよう。
「ありがとう神様!あ、「記憶の証」が欲しいんだけど材料だけでも手に入らないかな?」
「ああ、ペックがいいと言えばすぐに材料を用意しよう」
その言葉を貰って私は階下に本気ダッシュをする。
「凄い、風みたい!!」
感動するメリシアに「これが、人形が人間になった…そんな人間の本気だよ」と笑って言っておいた。
心配そうに私を見るルルにメリシアを渡してお爺ちゃんの元に駆けていく。
「お爺ちゃん!!」
「どうしたマリオン?そんなに走ってきて。もう君は子供が沢山いるお母さんなんだよ。そんなにはしゃいでいたら子供たちが驚くじゃないか」
「え、大丈夫だよ」
「うん、お母さんは家でもそんな感じ。毎日お父さんに飛びついているし」
「マリオン…、お前って子は…」
そう言って呆れるお爺ちゃんに仕事の進捗を聞く。
「え?僕はもうとっくに終わったよ。リークは今泣きながら左腕が終わって、これから左足。カリンとマリカもいい感じだけど、同じ女の子同士だね。妥協を許さない感じでいい仕事をしているよ」
そう言ってお爺ちゃんの指さした先にはイメージで見せて貰ったメリシアそっくりの女の子の頭が出来ていた。
「ふふん。お爺ちゃん流石!!ついでに私の願いを叶えてよ!神様のお許しも得たんだよ」
そう言ってお爺ちゃんを抱きかかえて別室に連行してしまう。
「あーあ、あの顔のお母さんは何かやらかす顔だよね」
「うん、お爺ちゃん可哀想」
「何だい何だい、こんな部屋まで連れてきて」
「お爺ちゃん、「記憶の証」を作って!」
「「記憶の証」?なんでそんなものを?彼女にはルルさんの作った「魂の部屋」があるだろう?」
「だ・か・らぁ…、「記憶の証」から記憶の伝達の部分はいらないの。欲しいのはね…」
そう言って私はお爺ちゃんにコソコソと耳打ちする。
「マリオン…お前…」
「どう素敵でしょ?ツネノリの為にもなるし、メリシアの為にもなる。そして力が活きたものになるの」
そう言って私は笑う。
「出来る?」
「マリオン、君は僕を誰だと思っているんだい?擬似アーティファクトの生みの親だよ」
お爺ちゃんもスイッチが入った時の顔になる。
「へへへ、だからお爺ちゃんって好き」
「マリオン、良い案をくれたね。これがうまく行ったら僕の生きてきた経験を後世に残せるよ」
「どういたしまして。リークの足が出来上がるまでに間に合う?」
「それこそ誰だと思っているの?材料があればリークが足を作るまでに3組は出来上がるよ」
材料は神様がくれるよと言うとお爺ちゃんはニヤッと笑って「じゃあ始めてしまおう」と言ってくれた。
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