第27話 今こそ話そう。

「圧倒!まさに圧倒的な戦闘力!

これが熟練VRプレイヤーの実力なのです」

そう魔女のアナウンスが入る。


バカヤロウ…、俺の力は20年間散々ガーデンに通い詰めていたからで一朝一夕に手に入る訳ではない。


問題の無くなったゼロガーデンで定期的に集まって皆で体を鍛え続けた。

技を磨き続けた。

それを簡単に言うんじゃねえ。


そこに魔女の声が聞こえる。

「お疲れ様。

私とあなた達にしか聞こえていないわ。

召喚演出で何処かに飛ばしてあげる。

この後の事は東に任せるわ。


また明日からのイベントは追って通達を出すわね。

イベントは正午開始だからよろしくね」


魔女の声が聞こえなくなった。

俺たち3人の足元に召喚の光が現れる。


「それでは頑張った3人のプレイヤーに惜しみない拍手をお願い致します」

魔女の声に合わせてコロセウムからは割れんばかりの拍手が鳴り響く。


「東、何処かで落ち着いて話がしたい」

「わかったよ。グンサイの街にあるホテルを抑えた。そこに飛ばすよ」


「すまない」

「いや、こちらこそ後手後手ですまない」


そして俺達3人はグンサイのホテルに瞬間移動をした。

時間は大体3時間が過ぎていた。

外では1時間と言ったところだな…


ホテルに入ると支配人役のスタッフが挨拶をしてくる。

「急で済まない。

一晩世話になる」


「ようこそおいでくださいました。

勇者様にお越しいただけて嬉しい限りです」


千歳が後ろで「勇者?」とか言っているが気にしない。


「最近、不便なんかはどうだ?

何かあったら明日朝に教えてほしい。

今晩は…」


「ええ、東様からもお話はいただいております。人払いはさせていただきます」


そして最上階にある、一番良い部屋に案内される。


階段を上りながら千歳が話しかけてくる。

「さっきはごめんなさい。身体、大丈夫?」

「ああ、痛みはあったが再生は出来た、大丈夫だ。

千歳こそ平気か?」

「うん、ありがとう」


そして俺達3人は部屋に通される。


「うわぁ…綺麗な部屋」

「凄いね父さん」

千歳とツネノリは素直に喜ぶ。



「さあ千歳、今こそ話そう」

俺は千歳を見てそう言った。


「ちょっと待った!」

千歳が慌てて言う。


「何だ?どうした?」

「一部屋だけ?私とお兄さんと3人で泊まるの?」


「ああ、お前達の身の危険もあるからな、3人纏まって居ないと…」

「年頃の娘を若い男の人と一緒の部屋に泊まらせる!?

身の危険って、こっちのが危ないわよ。

襲われるわよ!」

えぇぇぇ…


「お前なぁ…、ツネノリはそんな事をする男ではない」

「ああ、安心してくれ。千歳は俺の妹だ、俺は守る事はするが襲うわけがない」

ツネノリも一緒になって言ってくれる。


「どうだか、夜中に急にって事だって…」

ダメだ…面倒くさい千歳になっている。

ツネノリは千歳を女としてなんて意識して居ないのに…千歳がツネノリを男として意識してしまっているのがわかる。

コイツ、兄が欲しかったのか?


「ツネツギ、僕から提案だ」


突然、東の声が聞こえて俺達3人の前に実体を持って現れる。


「はじめまして、ツネノリ。

はじめまして、千歳、

僕はツネノリにわかりやすく言うところのこの世界の神。

千歳にわかりやすく言うところのツネツギの上司だ」


「へ?」と事態が飲み込めない千歳とは別に早々に理解したツネノリは深々と頭を下げる。


「どうした東?」

「あの女から連絡があったよ。今晩はこれ以上何もしないから親子水入らずでゆっくりと寝てくれと、だから千歳の為にもう一部屋用意しよう。

ツネツギ、君からしたら息子と娘でも、2人は数時間前に会ったばかりだ。

千歳の申し出もわからなくはない」


「そんな、だが何かあったら?」

「ああ、だから今晩は護衛をつける。

明日以降は千歳にも納得してもらってくれ」


「護衛?」

「ああ、今呼ぶよ」


そう言って部屋が一瞬光った後。

部屋に1人の女性が居た。


「あなた…、千歳…。無事で良かった。

ツネノリくん、久しぶり。

こんなに大きくなって。

千歳を守ってくれてありがとう」


「千明」

「お母さん!?」


俺の妻で千歳の母…伊加利 千明が俺達の前にいた。

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