第77話

12月2日(金)

吉田先生の復帰と、私が2学期でお別れする話をクラスですると、生徒たちは悲しんでくれた。

ほんの少しの期間でも、こうやって慕ってくれたことが本当に嬉しかった。


不意打ちに里巳くんに呼ばれて、ダメだった分かってるのに、ズルズルと里巳くんのペースにのみ込まれていった。

ずっと頑なに守ってきたのに、一瞬で崩れてた。

崩してしまった。


こんな私が人を好きになる資格なんてないのに。

里巳くんの愛情で溺れたいと思ってしまった。

里巳くんのキスを拒むことができなかった。


里巳くんは私が学校を辞めた後も会いたいと言ってくれて。

すごく嬉しかったよ。



12月7日(水)

里巳くんと図書館で会うようになった。

喋ったりしないけど、なんとなく里巳くんが近くにいるだけで温かかった。

でも、本当にこれでいいのかな。

いいはずないよね。



12月22日(木)

学校最後の日。

臨時でも初めてもったクラスの生徒。

今日で最後かと思うとすごく悲しかった。

それ以上に、もう里巳くんとも会わないって決めたから、その決意が揺るがないように必死だった。



1月10日(月)

里巳くんとの約束を破って、私は引っ越した。

里巳くんと会ってしまうと決意が緩んでしまいそうだったから。

それなのに。

自分で決めた事なのに、里巳くんのことばかり考えてしまう。


もう誰かを好きになることなんてないと思ってた。

なのに気が付くと勝手に図書館に向かっていて、里巳くんの姿をみてハッとした。

もう会わないって決めたのに、なんでここに来てんのよ…。


ずっと罪悪感でいっぱい。

自分の感情なんて消えてなくなればいいのに。

もう何も考えたくない。


***


「なんだよこれ、俺のことばっかりじゃん…」

先生の日記には俺の名前が何度も出てきて、胸が締め付けられた。


俺は先生と出会った頃から、先生に対して常に必死だった。

でもそんな俺とは正反対に先生はいつも余裕そうに見えていたから。

先生がそんなことを思っていたなんて、全然知らなかった。




「何見てんの?」

先生の声にハッとして、後ろを見ると先生が帰って来ていた。

日記に夢中になりすぎてて、全然気づかなかった。


「ごめん、読んじゃった…」

言い訳できないと思って素直に謝ると、そのまま日記を取り上げられた。

先生はため息をついて、その日記を棚に戻した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る