最終章
本当の気持ち
第73話
先生と再会してから半年が過ぎた。
再会してから時間さえあれば、先生と会って、お互いの家に泊まったりして。
今日も先生のアパートで一晩を過ごした。
でもこの現実が未だに信じられなくて、隣で寝ている先生の頬をそっと触る。
頬から伝わる体温を感じて、本当に先生がここにいるって実感する。
そんなことを繰り返していると、先生の目が開いた。
「ちょっとくすぐったいんだけど…」
寝ていたと思っていた先生は、いつの間にか起きていたらしい。
「おはよ」
そう投げかけると、先生は照れ臭そうに「おはよ」って言ってくれた。
それだけで幸せで、このままずっと俺の腕の中に納まっててくれないかなって思う。
先生は教養試験に受かって、来週から新しい学校へ赴任するらしい。
今日はその面談があるとかで、急いでベッドから降りようとした。
「ちょっと待って」
そんな先生の腕を引っ張ったもんだから、先生も態勢を崩して俺の上に覆いかぶさる形になった。
「積極的ですね、先生」
「ちょっ、里巳くんが腕引っ張るからでしょ」
先生はそう言いながら頬を赤く染めた。
「照れてる先生もかわいい」
「からかわないで」
「からかってない、本当に思ってます」
そう言って先生の後ろ頭を手をまわしてぐっと自分に近づかせる。
チュッとリップ音をならせば、
「バカっ」
って言って先生はベッドから降りてしまった。
まだ全然足りないのに。
「私、9時には家出るけど里巳くんも一緒に出れそう?」
先生が慌ただしく準備をしながら俺に聞いてきた。
あーあ、先生に予定がなければもっと一緒にいられたのに。
「先生の用事は何時に終わります?」
「午前中には終わると思うけど」
「じゃあ、ここで待っててもいいですか?」
「え、でも授業は?」
「今日は午後からなんで。少しでも先生と一緒にいたから、お昼ご飯作って待ってる」
そう言うと先生は優しく笑った。
「分かった。楽しみにしてるね、里巳くんの料理」
ほら、そんな顔したら脳みそが溶けてしまう。
先生に気づかれないようにそっと近づいて、
「早く帰って来て」
そう言ってまたキスを落とす。
先生が出て行った後のアパートは急にシーンとして、それがすごく寂しく感じる。
早く帰ってこないかなって、ベッドで転がりながら思って。
今の自分の状態があまりに自分らしくなくて、可笑しかった。
そのままいつのまにか寝ていたらしくて、目が覚めると11時を過ぎていた。
「やばっ、先生帰ってくるじゃん」
急いで体を起こして、冷蔵庫に入ってる食材を適当に取り出す。
時間がないから簡単にチャーハンを作った。
高校を卒業してから一人暮らしをしながら自炊してたから、多少のものは作れる。
先生、喜んでくれるといいな。
チャーハンが出来上がったのに先生はまだ帰ってこなくて。
座って待っていようとリビングに向かう途中で、棚にぶつかった。
その拍子に一冊のノートが床に落ちてしまった。
拾おうと思って手を伸ばすと、めくれていたページは先生の字で埋まっていた。
「日記?」
一番上には日付が書いてあったから、なんとなくそう思った。
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