第7話
「スーハル、今日時間あるか?」
「兄上?
ええ、もちろん……」
僕の予定なんてあってないようなものだ。というか、ない。兄上からの誘いなんて珍しいし、もちろん最優先ですとも。
「よかった。
それじゃあ、訓練場のほうに来てくれるか?」
「はい!」
兄上と訓練! 本当に久しぶりだ。僕の木刀を持って急いで訓練場へと向かいます!
「あー、ごめん。
説明していなかったな。
今日は剣の方じゃなくて、魔力の方なんだ」
まりょ、く? まりょくって、魔力!?
「え!?」
「そんなに驚くことか!?」
「え、いえ、すみません」
いや、なんか悪かった、と謝られてしまった。いやー、だって驚くよね。魔法だよ? もともとラノベとか好きだから、やっぱり使ってみたいという願望が……。それが叶うなんて嬉しすぎる。基本のベースはスーベルハーニだ。それは間違いない。でも、少しだけ混ざっている陽斗がこういう時たまに出てくるんだよね。
「えっと、俺はあまりきちんと教えてもらわなかったから、これであっているかはわからないんだが。
ひとまずやってみよう」
「はい!」
魔法の訓練、どんなことするんだろう。やっぱり定番はまずは魔力を感じることですかね。それでもいいんです。楽しみ。
「う、そんな目で見られるとなかなかきついな」
兄上?
「そんな期待しているところ申し訳ないんだが。
まずはとても地味なことから始めるんだ」
そういうと、説明が始まる。まずは魔力を感じよう、という話をされる。うん、やっぱりそこから始めるんだね。言われた通りに魔力を感じられるように、体全体に回す。うん、こういうとき、知識って便利かも。想像しやすい。丁寧に体に巡らせる。
……? なんか胸元が熱い気がする?
ちらり、と胸元に目をやる。え、これ光っている? え、何が光っているの!?
「んえっ!?
なんか、なんか光っている、光っていますよ、兄上!?」
「え?
あー、そっか、知らなかったか」
知らなかった? 光るの普通なの? この世界の人、魔法使うたびにこんなこと起きるの?
「ひとまず落ち着いて。
そうだな、魔力を通すと俺もスーハルも胸元にこれが浮かび上がるんだ」
いうと、胸元を開ける。急な行動に驚いていると、不意に一部が光り、なにかが浮かび上がってきた。大きく、鋭い爪をもつ鳥。どこかで見たことがある気がする。
「これ、国章……?」
「そう、よくわかったな。
俺たち皇族には生まれた時からこれが刻まれている。
普段は見えないが、魔力を通すと浮かび上がるんだ」
え、何その設定。これが僕にも浮かび上がる。しかも光る。目立つことこの上ないじゃないか! うううん、あれかな、厚手の服を着こめばばれずに済む? なんかいやだ、これ。
「はは、嫌そうな顔をするな。
これは直系の皇族の証だからな、普通喜ぶんだがな」
ますます嫌だ。母上と兄上はもちろん別だけど、基本皇族というものは好きではない。なのに、望んでいなくてもその証明がされてしまうだなんて。
「それにしても、やっぱりスーハルにもそれが浮かぶんだな」
まあ、それは一応あの皇帝の子ですから? 認めたくはないけれど。って、それは何よりも兄上が知っているよね?
? と首をかしげて兄上を見上げると、ため息をついて頭をなでてくれる。これはどういうことだろう。小さな声で兄上がごめん、とつぶやくのが聞こえてきた。
「さ、気を取り直して続きをしようか。
これが浮かんだということは、魔力を体に回すことは成功したということだ。
次は簡単なものからやっていこうか」
まずは言っていることを復唱して、といわれたので素直に従う。何もない方向に向かって手のひらを向けると、そこからブワッと炎があふれ出した。うん、これぞ魔法っていう感じ!
自分のはどうなるかな、ワクワクしながら同じ言葉を発する。すると、ポフッというなんとも情けない音とともに小さな火の玉が飛び出た。ああ、神様。どうせなら僕の魔力を最大値に振ってくれればよかったのに。だって、これ初めて使ったのに兄上と同じかそれ以上に大技出して驚かせるところじゃないの?
「これは驚いた……」
ほら、あまりにも魔法がしょぼくて驚かれているじゃん。うう、情けない。
「本当に初めから使えた」
思わず漏れたような声。でも僕にはしっかりと聞こえていた。本当にってどういうこと?
「よし、まずはいろんなものを使ってみて自分の扱える属性、扱えない属性。
扱えるものの中でも、得意なもの不得意なものを調べていこう」
それは一つ一つ確かめるということですか? こう、一発で何が使えるかわかる装置的なものがあってもいい気がするんだけれど。と、その前に。
「あの、兄上?
属性とは?」
「ああ、まだ説明していなかったな。
魔法には属性があって、基本属性が火、水、土、風の四つ。
それに特殊属性として、光、闇がある。
特殊属性は持っているものは珍しいな。
そして、先ほどのあれを光らせたということは基本属性はあると言っていい」
「そうなのですか?」
「これは、四属性がないと光らせることができない、といわれているからな。
つまり直系の皇族は基本的には四属性が使える。
まれに使えない人もいるけれど」
ふむふむ。つまり四属性なければよかったのかも……。やっぱり自分の意志に関係なく自分が皇族って証明されるの嫌だな。
「そういえば、属性を確かめる機器のようなものはないのですか?」
「きき……?
えっと、属性を確かめるためのものならあるんだが、まあ、諸事情で使えなくてな」
その諸事情、なかなか気になる。でも説明してくれないということは、言いたくないのだろう。それを追求するのもね。そのあとはそれぞれの属性を試してみることになった。
兄上の予想通り四属性すべて使えることが分かったところで、時間切れになってしまいました。
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