月夜の灯火

 ぽつり そしてまたぽつり

 月夜にともる 静かな祈りの火のように

 紅が日ごと 増えていく


 昨日まではなかったはずの場所が

 おごそかに厚い絨毯じゅうたんを敷くかのごと

 真っ赤に染め上げられ 

 見る者は束の間 縛り付けられる


 刹那せつな

 勢いよく打ち寄せ さんざめく波音が耳に響いた

 海辺に咲き 揺れ やがては流れていく様を

 吹き抜ける風を想起する



 圧倒的な存在感は 何を知らせるためか

 明確な秋の訪れか まだ遠い冬の声か

 それとも過去から続く想いか


 祈りの火が灯るごとに 夢とうつつの境もまた

 幾重いくえにも弾ける水飛沫しぶきの向こうへと

 溶けていく……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る