マリー(1)
物心ついた頃、私は 盲導犬?というのになるために日々辛い教育を受けた。
目の前で人がゴハンを食べていても
それに反応してはならず
人が私を呼んでも
その声に寄っていくこと叶わず
せっかく会話もできるのに
一言も発してはならない
なんでこんなに辛い目に合うのだろう
私は何かの罰を 受けているのかもしれない
そして盲導犬発表の日
私は不合格 とされた
その頃梅雨で その日も大雨だった。
梅雨が明けて 車が家の前に来た
トレーナーさんが私を 知らない人に渡す
私は物じゃない
私は伏せて 抵抗した。
知らない人は それでもお構いなしに私を車に乗せた。
私はどうなるのだろう
不合格だから 捨てられてしまうのだろうか
車が目的地に着くまで
私は不安だった。
車から降ろされた私は 玄関前に連れて行かれた。
車を運転していた男が、ベルを鳴らす
ドアが開けられて 出てきたのは
優しそうなイケメンだった。
どうやらご主人様になる人らしい
よし!マリー頑張るっ
ご主人様の向かわれる方へ 私は誘導する
ご主人様が止まろうとすれば 先に私が止まる
いつもご主人様の隣で。
ご主人様を危険から守るのが 私の使命
それなのに
先輩は邪魔をする
今も反対側にいたかと思うと 前に出たり
しまいには足に纏わりついて 困らせる。
もう! 邪魔をしないでっ!
そのうち先輩は
散歩中、ずっと後ろを歩き始めた。
先輩の中で なにかあったのかな
家の中では 先輩から叱言を聞かされる。
はいはい。 分かってますよ
それもいつしか 楽しい会話に変わっていった。
私は喋れないけれど。
2回目の暑い夏が来た
珍しく姉さんが
思い出を話してくれた
ご主人様のお母様のこと
そのときバトンの話も聞いた
姉さんは あたしはこんなんだから
何かあったら あんた頼むわねと。
そんなこと言われても
私は姉さんには勝てない
姉さんは 体は小さいかもしれない
ときには ご主人様を困らせることもやる
でも、ご主人様のこと
なにより大切だと思っていること
私は知っているから
それに私、いま楽しい。
ここに来て良かったと思う。
あのままいたら こんな充実した日々なんて
おくれてなかった。
だから私は2番でいい
今日の晩ごはん
ドッグフードを食べ終えた私は
シーチキンを美味しそうに食べる姉を見ていた。
あんなにがっついているのに
なんてきれいに食べれるのだろう
姉さんには 今でも驚かされる。
そんな姉さんが
おかわりをねだった。
ちょっ 姉さん食べすぎじゃない?
ケーキもあるのよ?
そんなこと思っていたら
シーチキンが目の前にあった。
くれるらしい
ごめん姉さん
思ってたほど 美味しくない…
ケーキ食べて 一息つく。
ここのところ寒かったから
ご主人様の調子が悪い
ご主人様は今日を楽しみにしておられて
いまの自分の体のこと 気付かなかったのかもしれない
よっぽど気持ちが昂ってたのね。
一息ついたら やっぱり体を怠そうに
直ぐに横になって おやすみになられた
人の気配を感じる
これは悪意だ
ドアがゆっくり開けられたかと思うと
男がすーっと入ってきた。
私はタンスの上の姉さんを見る
姉さんは待機を目で合図した
静かに寝たフリしておこう
男が悪意より 落胆を色濃くして
出て行こうとする
このまま出て行って と願うも
それは叶わなかった
ご主人様が起きてしまった。
慌てた男は ご主人様に詰め寄る
私は飛び起きて 男とご主人様の間へ
姉さんから ダメ出しが出た気がした。
そしたら 姉さんが男の手を噛んでて
小さいナイフが落ちた。
姉さん、流石っす。
私は慌てるご主人様を
トイレの中に引っ張って 連れて行こうとー
その時、男が姉さんを蹴った
蹴られた姉さんは宙を飛ぶ
姉さんは受け身もとれずに 落ちた。
ご主人様と私は 急いで姉さんのところへ
姉さんはここです ご主人様!
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