タツヤ (1)


雨が降る夜だった


母が珍しく 帰る前に

電話してきた。

母がホットミルクを所望らしく

準備して待つ。


帰ってくるなり 母は

ミルク ミルクと台所へ

そばで ニャーニャーないている


猫か?


これがクロとの出会い




ん?

上のほうから 視線を感じる…

僕はあくびを堪えつつ 背伸びをすると

彼女はそれを待ってたかのように 僕の膝に乗る。

クロは ヤンチャ系かまってちゃんだ

お淑やかではない。


毛繕いを始めてしまったので

いつもの事かと 呆れつつ撫でてやる


母が

クロちゃんは真っ黒ね

と、ダジャレを言ってたのを思い出す

どれくらい真っ黒のか?

この暗闇ぐらい真っ黒なのだろうか…


クロが独り言いっている

ニャーニャーとしかわからんが。


そうこうするうち 足が痺れた。

重いから、どいてくれない?




いつもの日課

散歩に出かけよう


クロがソワソワしてる

早く準備しなくちゃ



玄関を出て いつものルートへ


今日は少し風があるかな

隣でクロがニャーニャーいってるが

何を言っているのやら


クロは僕の持つ棒に 1度たりとも当たった事がない


こんなに足には当たってるのに。


器用だなぁ と感心しつつ

いつもの道を

いつものように 2人で歩く。

少し大袈裟かもしれないが

僕はこの時間 この空間が好きだ





そんなある日

マリーが家にやってきた

親戚の叔父さんに連れられて。


マリーは盲導犬だ。

いや、正確には盲導犬になれなかったらしい


叔父さんの友達に、盲導犬にかかわる職に就いている方がいると。

 その人が言うには、マリーは基本的には盲導犬のスペックを有してるが、土壇場になると自己判断してしまう とのこと。

だから譲ってもらったと。


盲導犬の道って厳しいな と思ったが

家族が増えて 僕は嬉しかった


クロの気持ちも知らずに。




家族が増えて10日ぐらいは荒れてたね

クロが。


武闘派クロは

家の中のあらゆる物を破壊する


武闘派状態中のクロに

叔父さん 猫パンチもらったって はしゃいでた。

おてんばな彼女ですみません


散歩に出かけると

クロが隣にこようとする。

その都度マリーに撃退されてるみたいだけど。


どちらか片方だけ撫でてると

もう片方が拗ねる。


最初は大変だったが

今では両手に櫛を持って 二刀流だ。


半年ぐらい経つと

やっぱり一緒に暮らしているからか

いつの間にか仲良くなってた。

ま、そうだよね


今も マリーのそばでニャーニャー言ってる




季節は巡って

もうすぐクリスマスだ。

ケーキを注文しよう


今年は新人のパティシエールが

かなりやり手らしく

クロとマリー専用のケーキも作ってくれるという


今から楽しみだ






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