詩の短編集

奈都

【女優】

あなたの口から泡のように

滑らかに出てくる言葉は

まるで紙のように軽い


ふんわりとした嘘の羅列を

見抜けぬほど阿呆だと

思われるほど丁度いい


微妙な塩梅で

向き合っているふりをすれば

「今」を上手に上書きできる


あなたが見つめている誰かを

透過した姿の向こうに幻影を見る


惑わされかき乱され掻きむしり

彷徨の夜を無理にやり過ごしたら

丁寧にハンカチを畳む


そろそろ舞台が整い緞帳が上がる



さあ、ワタシはあなたを殺す女優になろうか



 <お題:被>



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