第7話 俺が決める
「それで?使い魔の様子を見るに、お前の怪我は右足と左脇腹?」
「ああ。……そういえば、全然痛くないな。さっきまで服が擦れて痛かったのに。」
「……へぇ。あの先公、ちゃんと手当てしなかったのか?あいつも……お前に助けてもらったのに、恩を仇で……?」
蓮燔から知らない殺意と睨み殺しそうな冷たい視線がお茶を飲みながら伝わってくる。
こいつ、こんな顔も出来るのか……。
「……いや、一応……いや、かなりしっかりしててぶ厚めに巻いてあるんだが……立ったり座ったりした所為か軽く痛いんだ。」
「え。……ごめん、俺の所為だ。」
「大丈夫、言わなかった俺が悪い。」
「今は?本当に痛くないのか?」
「全く。怪我してるって事を忘れてしまいそうなくらいに。」
これ、神経死んでるんじゃ……?
「そういや、お前……よく俺に感謝やら助けてもらったやら言ってたが……何があったんだ?そして、俺は……何をしたんだ?」
「……。」
待てども待てども蓮燔は口を開かない。まるで、1226の時のように話すのを拒んでいる。
「……分かった。自分で見つける事にした。もう聞か「調べないでくれ!!」
痛みに耐えながらも怒っているような顔で突然大きな声を出し、レイが俺の怪我を案じてか唸る。
調べるのも……駄目、なのか?でも、俺は―――
「……頼む。1226も、あの事件の事も、全部このまま忘れといてくれ。……知っても辛いだけだ。」
「それは俺が決める事だ。例えどれだけ辛い過去でも、俺を言う人格を作ってる部品の一部。……蔑ろには出来ないし、それを忘れて逃げるなんて卑怯者に、俺はなりたくない。……が、お前が話すのを辛いと言うなら俺にそれを強制する力はない。だから、お前の口から聞かない。自分で調べるか自分で聞くかする。」
「奏……。」
「……でもまぁ、現状俺にはお前以外に頼れる物も、頼れる人も居ない。やばくなったら頼る。その時は……宜しく。」
「あ、ああ!勿論、任せてくれ!」
単純な奴だな、こいつ。これくらいで慰めになったのか。
蓮燔は嬉しそうに食事を終え、俺の食べ終えた空の食器を奪ってキッチンの奥へ消えていった。
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