二十六
翔鷹は一目見るなりため息をつきかけましたが、慌てて口を押さえました。そして、
「僕が詩文はもとより絵画にも造詣が深いことは、君もよく知っていると思うんだけれど、この絵は明らかに王摩詰の運筆そのままだ。ほら、唐の詩人で南画の祖といわれるあの王維だよ。そして書かれた詩は李白と杜甫のものだが、どちらも二人の真筆にしか見えない。僕に出資してくれている第八王子の邸宅にお邪魔したときに、王維と李白、杜甫の真作を見たことがあるから間違いないよ」
子柳はあまりの驚きに、思わず扇子を取り落とすところでした。側にいる翔鷹のことなどお構いなしに、扇子をじっと見つめています。そのありさまを、翔鷹はあごひげをひねりながら、興味深そうに眺めていたのでした。
これだけ真に迫る出来映えなのだから、贋作といえど献上すれば第八王子もきっと喜んでくれるだろう。もしかしたら仕官への道が開かれるかもしれない。翔鷹はそう考えたのです。
ついでに言い添えておくと、真面目で朴訥、才能が溢れる子柳のことを妬んでもいたのです。いたずら半分に、べそをかかせてやろうと軽く考えておりました。
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