もう寝るわ

「私からの誕生日プレゼントだよー!」


「この枕がか?」


「うん! 寝心地は最高だったよ!」


 使用済みなんかい。

 まあ、未来が言うくらいだしきっと寝やすいんだろう。


「で、俺が目を瞑ってベットに寝転がったのはこの枕を投げるためと」


「そうだよー」


「もう寝るわ、おやすみ」


「ええー!?」


 そりゃあ、な? こんだけ期待させといて枕って……

 もう今日はほんとに疲れた……




「んん、ふあぁー」


 体が覚えているのか空が明るくなる前に起きてしまったようだ。


「すぅ、すぅ」

 

 目を開けると杏樹がいた。

 あれ? ここって俺のベットだよな。

 まさか、昨日からこのままとか……?


「未来ー。 起きろー」


「んー? あれ? つっくんがいるー」


 毎度おなじみの寝ぼけモードだ。

 仕方がない。 目が覚めるまで俺は学校の準備でもしよう。


「つっくーん」


「なんだ? 朝ごはんなら俺は作れないぞ」


 いまだに料理はできないぜ! 練習はしてるんだけどな……


「起こしてー」


 未来は半開きの目で両手を俺の方に伸ばしてくる。

 しょうがないから俺はその手を掴み、引っ張ってやる。


「ぬおー、体が伸びるー」


 どうやら起きたようだ。

 あたりを見るなり顔が赤くなっていく。


「もしかして私、ここで寝ちゃってた?」


「ああ、起きたら横にいたぞ」


「えー!? つっくんの寝顔見て顔で遊んでたら寝ちゃってたの!?」


「おい」


 なんか聞き捨てならないことが聞こえたんだが。

 勝手に人の顔で遊ぶなよ。


「大丈夫! 落書きとかじゃなくてフニフニしてただけだから!」


「フニフニもするなや」


 フニフニってなんかかわいい言葉だな。

 って違う! なんで俺で遊ばれなきゃならないんだ!?


「俺ってそんなにイジリがいがあるのか?」


「まーね、人並み以上は」


 嘘だろ…… 俺ってそんなキャラだったっけ……?


「それよりつっくん。 時間大丈夫?」


「え?」


 時計を見ると七時半になったところだった。

 いつもなら家を出てすぐの時間だ。


「未来、急いで準備しろ。 今日は小走りだな」


「えー、もういっそのことゆっくり行こうよー」


「それだとまた変な噂とかたつだろ」


 特にあのゴリラとかな。

 そしてうちのクラスメイトこと、青少年異端審問会とかな。

 こんなに物騒な名前が付いたクラスなんてそうそうないだろう。


「確かにうちのクラスならありえるねー、まあ色々されるのはつっくんだけだろうけど」


「そこが問題なんだよ! ほら、さっさと行くぞ」


「あ、ちょっと待って! ヘアピンだけさせてー」


 俺があげたヘアピンを急いでつける未来。

 なんか嬉しいな。 

 さて、俺も組紐のブレスレットでもつけて学校に行こうかな。


「ってもう四十五分じゃねえか!」


 そうして俺と未来は走り出す。 遅刻を免れるために。

 最後のがなければかっこいいんだけどなあ。

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