き、記憶喪失!?
「紗月! 大丈夫か!?」
「んん、うるさいですよ……」
「大丈夫みたいだ…… 良かった……」
一体どうしたんでしょう? 僕はどうしてベットに寝てるのでしょうか?
「えーと、あなたは?」
「馬鹿野郎、命の恩人の雄二様だよ!」
おかしいですね、僕の知り合いにこんなに熱い人はいなかったような……
といいますか、そもそも知り合いの顔が誰も思い出せません……
「もしかすると僕は記憶喪失なのかもしれませんね」
「なんかすごい落ち着いてるな…… って記憶喪失!?」
「はい、あなたも含めて知っている人の顔が思い出せませんので」
「え!? ほんとに誰もか!?」
「はい、ほんとに誰も」
僕自身でも焦ってはいるのですが誰も思い出せない以上頼る人がいないですし……
一体どうしましょうか……
「ちょっと待ってな! とりあえず杏樹と未来を呼んでくる!」
「あ、はい。 知り合いの方でしたらお願いします」
「ああもう! 違和感しかねえな!」
そう言うと彼は扉を開けて走って行ってしまいました。
違和感ですか…… 僕は一体どんな人物だったんでしょう。
それにしても記憶喪失の僕を一人にするなんて何を考えているんでしょう。 このままいなくなったらと考えないのでしょうか?
「つっくん、大丈夫!?」
「りゅーくん! 記憶喪失ってほんと!?」
「え、えーと」
つっくん? りゅーくん?
僕はどんな名前なんでしょう。
「そのすみません…… どちら様でしょう?」
「「え……」」
やっぱりショックを受けていますね。
それほど僕は大事な存在だったのでしょうか?
「私だよ!? 未来だよ?」
「未来…… あなただけ記憶に覚えがあるような……」
「私はどう? 杏樹よ?」
「すみません……」
この未来さんと言う人以外覚えがありません……
未来さんもなにか大事な人だったくらいしか思い出せませんし……
「私のこと本当に覚えてないの……?」
「ごめんなさい…… 大切な人としか思い出せません……」
「そっか……」
僕が唯一覚えているということは恋人か何かなのでしょうか。
「私に関してはさっぱりなのね……」
「まあ、俺も覚えてないみたいだしとりあえず病院にでも連れていくか」
「そうね、思い出してくれないと困るし」
「それに俺は紗月がこのキャラなのが嫌だからな」
「脳は特に異常はないですね、倒れた時に頭を打った一時的な記憶喪失ですので安静にしておいてください」
僕は学校を早退し近所に住んでいるという佐藤さんの同伴の元、病院に来ています。
「はい、一時的とはだいたいどのくらいかわかりますか?」
その時間によっては僕の身の振り方も変わってきますから。
「そこは何とも言えませんね、今すぐかもしれないし一か月後かもしれないし…… 残念ながら私たちにはわかりません」
「そんな! この子は今売れ始めてる作家なんですよ! 一か月後は困ります!」
佐藤さんは僕のことを色々と教えてくれた。
僕はラノベ? 作家であること、未来さんは僕の恋人であること、そして未来さんと僕は同居しているということを。
「思い出すかどうかは紗月君次第ですから、彼を信じてあげてください」
「そんなぁ……」
「心配してくださってありがとうございます。 自分でも思い出す努力をするので佐藤さんはそんなに心配しなくても大丈夫ですよ」
「君、ほんとに紗月君なの……?」
そんなに人柄が変わっているのでしょうか。
とにかく脳に問題がない以上家に帰ってゆっくり思い出してみるとしましょう。
「ただいま帰りました」
「おかえりなさい、つっくん……」
「お迎えありがとうございます、未来さん」
「やっぱり違和感がすごいよ……」
「えっと…… すみません……」
こんなに可愛らしい彼女と同居しているなんて僕はなんて幸せな人生を送っていたんでしょうか。
未来さんのためにも早く思い出さなくては。
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