バグを生み出しやすい体質のおれが異世界で主役になれるなんて
青星円
第1話 おれはきらわれものだった
小学校のチャイムがなり、放課後の時間が始まる。
ランドセルを置いて誰かの家に集まってやることはもっぱらファミコンだった。
ぼくも例外でなく、学校の近くのたまり場になってるヤツの家に遊びに行った。
人のプレイをみて「早く一機死なないかな」と呪いをかけ、自分の順番が来るのを待つ。または面が変わったら交代してみんなでクリアを目指すこともあった。今日はそっちだった。
やっと自分の番がくる。
コントローラーを渡され、さてプレイ…というところで画面が急に止まる。
何をしても動かない。
ぼくはがちゃがちゃとコントローラーを動かすが画面の主人公はピクリとも動かない。
「ほらー!!!」誰かが叫んだ
「だからいやなんだよ、こうきにゲームやらせるの!」
「せっかく5面まで進めたのに!」
その言葉にぼくはびくっとする。
「お前がやるとすぐゲームバグるよな」
とうとう本質を付かれてしまった。
……ぼくは、バグを生み出しやすい体質らしい。
やるゲームやるゲームとにかくバグる。
画面が止まったり、入れない場所に行ってしまったり、画面がめちゃめちゃになったり、音楽が消えたり。再現性がなく信じてもらえないこともあったが、もはやぼくがゲームをやるとバグるということはクラスメートの誰でも知ることとなっていた。
キャラが無敵になったときだけ、ぼくは重宝がられた。
「またできねえのかよ?」といわれたがぼくはやりたくてやっているわけではないのだ。
「ごめん…」
ひとこといってぼくは立ち上がった。
帰ろう。帰ってもファミコンはある。自分ひとりでやってバグれば、誰にも迷惑はかけない。
学校では嫌われてるわけではないが、ファミコンをするとすぐこうなる。
放課後はひとりでファミコンする時間となった。
……これが小学校時代のぼく、いや、今はおれ、大場虹貴だ。
この体質はずっと受け継がれていて、
その後ディスクシステム、SFC、ゲームセンター、メガドライブ、PCエンジン、PC-98、X68K、Windows95、PS1、ドリームキャスト…
から現代まで続いている。
ゲームを唯一の趣味としているおれとしては悲しいことだ。
しかたないのでバグが発生したら動画を投稿することにした。
それで令和2年の今はそこそこの人気チャンネルをもっている、それが今44歳のおれだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます