地下水道の調査依頼④

「さてと……俺たちも頑張るか」

「きゅっ!」


 改めてパーティーの良さを感じた。

 俺もビレナとああいうパーティーを組めるようになるだろうか。


「きゅきゅー!」


 考えごとをしている間にキュルケがフクロネズミを発見して合図をくれた。


「キュルケ、先回りして足止めできるか⁉」

「きゅっ!」


 すぐに飛び出していくキュルケ。剣を抜いて追いかけ、挟み撃ちの形をつくった。


「よし! 追い詰めたな」

「きゅっ!」


 逃げ場のなくなったフクロネズミの取れる選択肢は、キュルケと俺、弱く見える方にイチかバチかで飛び込むことだけだ。

 当然そうなればキュルケの方を選ぶはず……。


「ってなんでこっちにきたんだよっ⁉」

「きゅー」


 妙にドヤ顔のキュルケを眺めながら、飛びかかってきたフクロネズミを返り討ちにして仕留めた。

 ちょっと納得がいかない……。


「まあでも、とりあえず一匹だ」


 解体に時間をかけていると目標数に到達しない。それどころか俺は時間をかけたってあそこまでキレイに解体はできないわけだから、簡単に討伐証明部分だけ切り取ってキュルケの餌にする。


「きゅぷー」

「なんだその鳴き声……」


 グレイラットほどではないにしてもまあまあな大きさのものを食べたと思うが相変わらずすぐ元気そうに飛び回っていた。

 その後も順調にフクロネズミの討伐を行って目標数に到達した。


「よしっ。今日のノルマはクリアだー」

「きゅー」


 キュルケと喜びあい、そろそろ引き返そうとしたところだった。


 ――ドンッ


「なんだ⁉」


 下水道の奥から爆発音のようなものが聞こえ、地面が揺れる。

 同時に何か、下水道内の雰囲気が一変したのを肌で感じた。


「これは……」

「きゅー」


 キュルケも周りを警戒して毛を逆立たせている。

 異変があったのはまさに、カインたちが進んでいったほうだった。


「きゅ……」


 気を引き締めるキュルケ。

 冷静に考えれば、俺が行ってどうこうなる状況ではないだろう。

 調査依頼はこの時点で成立している。このまま引き返しても基本報酬はもらえる。

 今感じるこのプレッシャーは、間違いなく引き返すべきレベルのものだ。

 冒険者は直感を信じて動くべきだ。この能力如何で活躍するか死ぬかが決まるのだから、俺だってそれなりに感覚は研ぎ澄ましてきたはずだ。

 その直感が、本能が、この先には進むなと訴えかけてきているのだ。

 キュルケと目を合わせる。


「きゅっ!」


 覚悟を決めた顔で鳴いた。

 きっと俺も同じような顔をしているはずだろう。


「カインたちを助けるぞ」

「きゅー!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る