二対二

 現状を確認する。

 相手のハイエルフは六体。


 一体はビレナと超常の殴り合いを繰り広げている。

 ただ見ていると徐々にハイエルフの放つ光が弾き飛ばされるように減少している。

 ビレナが倒すのは時間の問題だろう。


 ティエラも戦闘前からの宣言通り、一体を圧倒している。

 いわく、「長老でも一人や二人ならなんとでもなるのだけど……数が面倒よね」とのことだった。

 魔法弓がもはや弾幕のような規模になっているし、それを放ち続けるティエラの笑顔が怖い。

 私怨が多分に込められているようだった。


 バロンが二体を引き受ける形になっているが、こちらも心配はいらなそうだ。


「ご主人。私とアオイで他の二体は引き受ける。ご主人がバロンの元へ向かった二体の始末をつけるといい」

「わかった」


 防御はバロンが行っているなら、カゲロウを百パーセント攻撃に回せる。

 やってみよう。


「なぁに、もしなにかあればすぐ助けに行く」

「心強いな……」


 それだけ言うとベルはアオイになにか合図を出してまだ動いていなかった二体のハイエルフへ向かって飛んでいった。


「行くか」

「キュクウウウウウウウ!」

「きゅっ!」

「グウゥアアアアアアアアアアアアアア!」


 三体の相棒たちとバロンの元へ飛び込んでいく。


「ぶちかませ! ギル!!!」

「グルゥアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


 力を増したギルによる極大のブレス。

 もちろんバロンには事前に合図を出している。


「助かる!」

「ほかはなんとかなりそうだ。この二体は俺たちでやろう!」

「ああ!」


 バロンとの共闘。

 当然というかなんというか、ブレスを受けてもハイエルフたちは元の姿のままだ。

 多少ダメージを蓄積してくれていれば御の字というところだろう。


「バロンとキュルケが防御を! 俺とカゲロウで攻撃する! ギルは上空から支援を頼む!」

「よし!」

「キュクウウウ!」

「きゅきゅ!」

「グルゥアアアアアア!」


 それぞれ応えて配置につく。

 まずバロンが一体の動きを止めるべく斧を叩きつける。見事、均衡状態を作り出す。


「きゅきゅー!」


 キュルケも飛び出していき、バロンが狙ったのとは別のハイエルフへと向かっていく。

 その間にギルは空高く舞い上がり二体を牽制するように口に炎を蓄えて待機した。


「行くぞ……カゲロウ!」

「キュクゥウウウウウウウウ!」


 防御は捨てる。

 いざというときはリリィに頼ればいい。

 今回リリィを数に加えていないのはそのためだからな。


 危険度Sランクの災厄級モンスター炎帝狼のその力、存分に発揮してもらうとしよう。

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