第22話 思うがゆえに
「いやあ。宮成の奴こんなに綺麗な人と付き合ってるなんて」
「ありがとうございます」
友人の江崎が運転しながら冬莉と話をしている。
助手席に座ってる高橋も江崎に便乗して盛り上がっている。
今日は高橋達が「いい加減お前の彼女紹介しろよ」というので4人で遊園地に向かっていた。
この歳になって遊園地ってどうなんだ?と思ったけど、冬莉に話したら意外と乗り気だったので誘った。
いつものように俺の車を江崎が運転して遊園地に向かっていた。
楽しそうなのは冬莉と友人二人。
俺は正直心配していた。
冬莉の気持ちが2人のどちらかに行くんじゃないかと。
実際俺と話しているより楽しそうだった。
「ナリ。どうしたの?さっきからずっと黙ってる」
「何でもないよ。平気だから」
「お前さ、自分の彼女心配させるような態度取るなよ」
「そもそもこんなつまんない奴にどうしてこんな美人が。片桐さんいくら積まれたんですか?」
言いたい放題の2人に対して冬莉はにこりと答える。
「このつまんないところに惹かれたんですよ」
惚気なのか、けなされているのかよく分からない解答。
「ナリも2人の言う通りだよ。遊園地なんて初めてなんだから楽しくしよう?」
「そうだね……」
相変らずのさえない表情で返事をした。
遊園地についても3人ははしゃいでいた。
遊園地ではしゃぐ歳じゃないと思いながらも3人のノリについていけないでいた。
江崎と高橋は俺の過去を暴露しながら笑い話にして冬莉に話している。
そして乗り物では「なんで宮成だけが片桐さんの隣なんだよ!」と不満を言っている。
俺の彼女だから当たり前だろと思ったけど冬莉がさらりと「じゃ、一回だけ一緒に乗りましょう」と言った。
2人とも一回ずつジェットコースターに冬莉と乗る。
2人とも俺よりも食べる量がすごい。
フードコートで食べたくらいじゃ飽き足らずにお好み焼きや焼きそばを買いに行く。
その間だけ冬莉と2人きりになった。
「面白い友達だね」
「……まあね」
どっちが気に入ったかとか怖くて聞き出せなかった。
「ナリ、今日帰ったら話があるんだけどいいかな?」
「話?」
「うん、ナリの事が気になったから」
なんだろう?
まさかどっちかに告られたとかそんなんだろうか?
ますます俺の心はブルーになった。
夕方になって遊園地を発つと帰りにファミレスによって夕飯を食べる。
すると江崎が言い出した。
「今度は片桐さんの友達を俺達に紹介してよ」
冬莉を狙っていたんじゃないのか?
だけど冬莉は丁寧に断った。
「ごめんなさい。私の友達皆結婚してるから」
「マジで!?」
流石にその話には俺も驚いた。
まだ大学出てそんなに経ってないだろ?
「……それに」
まだ何か理由があるのか?」
「私の彼氏を散々コケにするような人にとてもじゃないけど紹介できない」
きっと私の事もコケにするつもりだろう。
大体まだ俺を友達に紹介していない。
冬莉の言葉で今まで盛り上がっていた2人はすっかり落ち込んでしまった。
2人を高橋の家に送ると、俺が運転席に、冬莉が助手席に座って家に帰る。
家に帰ると風呂に入ってリビングでジュースを飲んでいると冬莉も風呂から上がって来た。
「ナリ、遊園地で言った事覚えてる?」
「ああ、話があるんだったね」
「うん。ナリ今日私があの二人に靡くんじゃないかって怯えてたでしょ?」
え?
「ごめん、態度に出てたかな」
「私にだけ分かったのかな?きっとそれで落ち込んでるんだって感じたから。けどそれは私を軽視してる証拠だよ」
「どうして?」
「私の事そんなに信用無い?簡単に友達に取られるような彼女だと思ってた?」
あ……。
「ごめん、あまりにも楽しそうにしてたから」
「それは当たり前だよ。ナリの彼氏として招待されたんだから。ナリも『愛想のない彼女』なんて思われたくないでしょ?」
それもそうだな……。
「でもちょっとは嬉しいんだよ。そう思っていてくれることが。でもやっぱりその程度でしか思われてないと思うと辛い」
冬莉の気持ち的には確かに失礼な話だよな。
じゃあ、最初から紹介しなきゃいいだけの話した。
「それも違うよ」
「……なんでわかったの?」
「ナリの考えそうなことなんてすぐわかるよ」
そう言って冬莉はにこりと笑った。
「私の知らないナリの事少しでも知ることが出来て良かった。あの人達に彼女が出来ない理由も何となく分かった」
「どういう事?」
「ああやって友達を見下すような事言って盛り上げようとする心構えじゃ無理に決まってるよ」
だって仮にあの人達と付き合う人は、陰でああいわれる羽目になるんだから、と冬莉は言った。
まあ、冬莉の言う通りだな。
「それにしても冬莉の勘はすごいな」
「私より兄の冬吾の方が凄いよ。私が分かるのはナリだけ。愛莉に似たのかな?」
冬莉のお母さんもお父さんの気持ちがわかるらしい。
「でも、そんなに心配ならいい手があるんだけど」
「どうすればいいの?」
「早く私をナリの物にしてよ」
冬莉はそう言って抱き着いてきた。
「分かってるんだけど、色々分からなくてさ」
「何が分からないの?」
そうだな……。
「例えばベッドに誘う時どうすればいいんだ?って」
俺が真面目に答えると冬莉は笑い出した。
「そんなに真面目に考える必要ないよ。けどそれがナリの良い所だよね。……わかった」
何が?
「私が口実を作ってあげる。絶対にナリをその気にさせてあげる。私はいつでもいいんだけど、やっぱりナリに誘われたいから」
どんな手段を使ってくるのだろう?
「そろそろ寝よう?明日からまた仕事だし」
「そうだね……」
そう言うと俺達は寝室のベッドに入って寝る。
どうやって冬莉は雰囲気を作り出すつもりなんだろう。
俺に拒否権を与えない手段らしいけど。
その日が俺が魔法使いを卒業する日になるのか。
そう考えると緊張してきた。
いつでもいいようにゴムくらいは買っておくか。
ブラの外し方とかどうやって覚えたらいいんだ?
片手でやるとカッコいいらしいけど、手こずると惨めな気分になるらしい。
動画でも見て覚えるしかないのだろうか?
翌朝、寝不足の俺は冬莉に起こされた。
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