始まりの兆し

 葉も花も 一切の装いを脱ぎ捨てた

 木々の合間を抜け

 早く花の季節が来ないかと 夢を見る


 幼い頃 圧倒的に心を満たしたはずの桜は

 今や梅にその場を明け渡しつつある


 誰よりも先にと 急ぎ春を告げる白や紅

 最初は ひっそり 密やか 秘めやかに


 けれどいつしか 華々しく寒空へ咲き誇り

 ふわり 高貴な香を辺りに漂わせる


 冬は終わりの兆しを 見せぬも

 もう何処かで 咲き始めたろうか


 まだ見ぬ艶やかな 姿を想い描きながら

 今日も期待を胸に 寂しい並木道を行く

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