雨の中を歩く

2019年冬


昔から雨のなかを歩くのが好きでした

小雨程度なら傘もささずに歩いていました


その日も傘をささずに歩いていました


兄と口論して家を飛び出した私は

時間を潰すため適当に歩き回っていました


何年も帰省していなかった私にとって

見慣れた景色に見慣れない景色が

混ざっているような不思議な感覚でした


この道はあの辺りに

繋がるはずだけど

記憶のままかな?


この道は知らないけど

どこに繋がるのかな

行ってみよう


そんな感覚でした


頭が冷えれば少しは落ち着くかな?

そう思いながら冬の雨の中を歩いてみたのに

却って兄に対するいらいらが募っていきます

涙が出そうになるのを堪えながら歩き続けました


そんなときふと

道の脇の看板が目に入りました

「凹み、キズ修理します」

って


『心の傷と凹んだ気持ちも修理してくれませんか?』


そんなことを考えてしまい

帰ろうって気になりました


兄とは拗れたままだけど


元日の朝

私は逃げるように家に帰りました

実家より安心できる場所に

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