第7話 幸せボックス
少し長い時間眠ってしまった。もう日が昇っていて時計の針は午前8時を指していた。
もうすぐ夏になるため、少し暑いくらいの気温だった。
俺は眠っていた体を起こし窓の外を見る。何羽か飛んでいる鳥をみて、「羨ましいな……」自然とそんなことを言っていた。
飛べるのが羨ましいとも思ったし、それとは別に人間より寿命が短いから。
そんな理由でもあった。
俺は「はぁ…」とため息をついてからまた窓の方に目をやった。
すると…「ため息をすると幸せが逃げますよ〜」そんな声が聞こえた。
カーテンを開けると花優がこちらを見ていた。
「幸せって逃げるもんなのか?そもそも幸せって自分でつかみ取るもんじゃないのかー?」
まあ、俺はその幸せに逃げられたんだけど。
「歩呂良くんは幸せっていつ、どんな時に使う言葉だと思いますか?……私は嬉しいことがあったり、楽しいこと、褒められたりした時に『あー幸せだな』ってなります。…幸せってそんなに大きいものじゃないんですよ。だからどんなに嫌なことがあっても次の日になったら小さな幸せがあります。もしかしたら大きな幸せかもしれません。けれど、必ず嬉しいことは訪れると思います!」
そういって花優はにっこりと笑った。
……幸せ…か。最近幸せと感じることがなかったからそんなこと考えたこともなかった。
「花優は病院にいて『幸せ』と感じることはあるのか?」
「私ですか?私は…毎日が幸せです!」
病院にずっといて本当に幸せなんだろうか。
俺は「そっか…」とだけ呟いた。
「花優は趣味とかないの?」あんまりこいつとはネガティブな話は避けたいと思ったので別の話題に変える。「趣味……ですか?」
「そう、趣味だよ。こう…なんか自分が好きなこととかやってて楽しいこととか、まあいろいろ」
花優は「うーん…そうですねー」と首を傾げてから「お喋りすることが好きです!」と閃いたように顔を明るくして言った。
「お喋り?人と喋るってそんなに楽しいか?」
「はい!人とお話してる時が1番楽しいと思います!話してる時の相手の癖だったり話し方だったり、一人一人が違ってとっても面白いです!」
花優はそう言った。やっぱり花優は見る所が変わっているというか……少し変だなと思い、つい笑ってしまった。
「え!?私何かおかしなこと言いましたか!?」
「そうだな、俺的には少しおかしいな…けど花優って面白いんだな」
人と話している時はだいたい「めんどうだなー」なんて思いながら聞いているけど花優と話していると心が安らぐというか……なんていうか楽しい。
「私、そんなこと初めて言われました…これも幸せに入りますね!」
と喜んでいた。
「そうだな、幸せボックスにでも入れて置いたらいいんじゃないか?」
とふざけていってみると
「そうですね!幸せボックスに入れておきましょう」
と言って空中に手で箱のような物を作り、そこに何かを仕舞うようなしぐさをして
「できた〜歩呂良くんも幸せボックス作りますか?」と言ってきた。
けど、俺には幸せを箱に入れるほどの幸せなんてない。けど、せっかく俺が提案したんだからな。
「そうだな…幸せなことがあったら俺も幸せボックスに入れておくよ。」
そういって俺も空中に幸せボックスを作った。
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