第97話 街角を行く人波が跡切れると

「やっとここまで来たな」

 運転しながら俺は呟いた。

 村への曲がり角、メリルと初めて会った場所である。

 ちなみに俺が運転してる理由はこの先木々の間を通らないといけないから、決して愛車をメリルに取られそうになってて焦っている訳じゃない、ホントダヨ?

「流石に転がり出て来ないな」

 森に入って進みながら言う、もちろん囮の角兎アルミラージの事だ。

『そりゃそうだよ、さっきお腹いっぱい食べたし肉もあげたじゃん』

 ラビはそう言うけど毎回毎回遭遇してたら出てこない方が違和感があるんだよ。

 キキィ...。

 そして何事もなく到着した...エルピオーネの村に。

 タタタっと駆け出す義姉妹、ちょうど音を聞きつけたのかドアを開けるネシンさん。

 そこに飛びつく二人、現地語で遠いのでよくわからないけどただいま、おかえりって言ってるっぽいな。

 そしてこっちをみて顔色を変えて駆けてくるネシンさん!いや、フォーク投げないよね!?

『ゼニス!アミダラの若旦那じゃねーか!?』

 そう言ってアミダラさんに抱きついた。

『久しぶりだなネシン、もう若旦那って歳じゃないよ』

 ハグをした後握手をしながらアミダラさんが言う。

『どうしてこんなところまで?今じゃ大商会の会長だろう?』

 そう問うネシンさんに。

『ツケを回収しにきたんだよ!利息がついてえらいことになってるぞ!?...なんてな!そこのヨーイチさんからお前の話を聞いて会いたくなって同行させてもらっただけだよ』

 ネシンさんはヤバって顔をした後真相を聞いてほっとした顔になる。

『冗談がきついぜ...おっとヨーイチ、塩はどうなった?』

 言われて俺は荷馬車の幌を開ける。

「バッチリだよ、金の方もアミダラさんが上手いこと売ってくれたおかげで今現在で5割増しだ」

 俺がそう言うとネシンさんは。

『今現在で?』

 と不思議な顔をする。

「ああ、仕入れすぎたからソマリンの町に同じ量置いてあるんだ、馬車に積めなくてね」

 ネシンさんはキョトンとした顔から大笑いして。

『そいつは良い!大儲けじゃねーか!まぁ立ち話もなんだ、とりあえずみんな家に入ると良い』

 そう言って歩いて行った。


「狭いな」

 素直な感想だ。

 みんな家にと言われてぞろぞろと入ったわけだが元々最大四人で暮らしてた家である、ラビまで入れたら11人もいる為手狭どころの話じゃない。

「よし!」

 俺は気合いを入れるとタープや椅子、テーブルなどを引っ張り出して庭に簡易リビングを設置し始める。

 そこにみんなを集めてお茶と談笑、そしてクマ肉を引き摺り出す。

「丁度いい、折角肉があるし出資者のみんなも呼んで夜はパーティと洒落込もうじゃないか」

 そういいながら解体を始めると。

『ヨーイチ!ジムニー借りるわよ?』

 と言ってメリルが行ってしまった。

 多分ワズマーミさん達を呼んできてくれるんだと思うんだけどさ...やっぱ乗っ取られてない?俺の愛車。

 ネシンさんやアミダラさんも手伝ってくれてどんどん切り分けられていく肉、何よりローズさんがサクサク大まかに切ってくれるのでそこから切り出すのが楽なのだ。

 ついでにノヤーロ君への指導と練習させる事も忘れない騎士の鑑だな、モフモフさえ絡まなければ。

 解体しながらネシンさんにカリンの目が開いた事など話すととても喜ばれた、そんな時。


『あーら、おかえりなさい〜ヨーイチちゃん』

 うわ、背中に寒気がした。

 ジムニーから降りてきたのはワズマーミさんフォースさんイアンさんだ。

『出資者三銃士を連れてきたよ』

 ん?メリルが髭面のおっさんに見えた気がしたけど多分セリフのせいで幻覚を見たんだよな?

 その時。

『まったく、いい男を見るとすぐ絡む癖は相変わらずじゃのう、馬鹿弟子よ』

 と、アイさんが言った。

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