転移をして、動く

 転移が終わり目を開けるとこの前アイビーさんと一緒に転移をした所と同じところに転移していました。


 周りを見た後に自分自身の装備ちゃんとあるかを確認します。偶に失敗して神の一部がちぎれたり装備が無くなってたり、欠けてたりするので気を付けなければなりません。何より欠けると偶に壊れて動かなくなるので注意すべきところです。


 今回持ってきたのは一般人対策のスタンロッドにラウンドシールド、それといつものグレネード各種を二個づつ、グレネードをいつも持ち歩くのはほとんどの世界で簡単に一般人の意表を突くことが出来るからです。特にスタングレネードの場合は投げられた物を対処しようと多少注意して見ることになるのでよく効くのでそれほど兵器開発が活発な世界じゃない限りは持って行っています。


 剣とスタンロッドも一見すると剣の方が危険に見えますが、実際の所剣が危険になるのはその手の使い手が持った時ぐらいで、殺し合いの時に素人が使っても意味がありません。今回私が警棒を持っているのは一般人を殺さない為でもありますが、何より剣より使い勝手がいいからです。剣は刃の部分を当てないと殺傷能力が低くなるので、創造課に改良されて持ち手以外のほとんどの部分に電流を流しているスタンロッドの方が軽いし楽なのでたくさんいる一般人相手だと便利なんですよね。


「さて、皆さんいますか?」


「ユッカいるっス」「バロック問題ありません」「セラ無事でーす」


 隊長とアイビーさんは向こうにいるので、攻める部隊は全員揃っていますね。


「では転移前に隊長が話しをしていましたが再度確認を、これから私達は真正面から突っ込んで転移者を殺します。抵抗する人がいる場合は転移者以外は殺さずに無力化すること、間違えても殺さないようにお願いします」


 隊長に『仮にも別の部隊に分けて動くのだから、攻めの方の作戦はナギが考えてくれ』と言われたのでこの考えは私が考えました。…と言うよりも私が何故か副隊長的な扱いをされているんですよね。本当は一番の古株のナギさんがやるべきなのに本人は乗り気ではないので私にお鉢が回ってきたということです。任された当時は不満はありましたが、こういう機会ぐらいしか役割が与えられないと知るとこれくらいなら、まぁと思い直して受け入れることにしました。


「言われなくても分かってるっスよ。それよりも本当に正面から突撃するんスか?」


「ええ、転移者、転生者は少なからず正義感と言うものは持っています。自分のせいで親しい人が傷ついていると分かれば、向こうから出てくるでしょうそこを狙います」


 後はジンクスと言いますか、転移者や転生者に行う暗殺や不意打ちはほとんど失敗に終わることが多いです。失敗のパターンは大きく二パターンあって、転移者の超人的感覚で気が付くか、誰かが庇うことで失敗に終わります。それで終わればいいのですが、偶にパワーアップする可能性があるので隊長は正面突破がほとんどです。

今の私達は最大戦力の隊長がここにいないので、正面突破が最善の手段だと考えました。


「作戦に関しては不満はありません。配置は前が私とナギさんで後ろがユッカさんとセラさんで合っていますよね?」


「その通りです」


 確認するようにバロックさんが問いかけてきたので肯定で返します。


 今回の仕事での問題は配置でした。今までの仕事は私達が一般人の足止め、隊長が転移者、転生者を殺す、複数人いる場合はそれぞれ人数を分けて対処していたので、今回のような全員で転移者に行くという状況が今までなかったので苦労しました。最初は隊長と同じ方法で転移者と私達の誰かがタイマンで行く考えで進めていましたが、私やバロックさん、セラさんは転移者とタイマンできるほどの実力はまだありませんし、唯一対抗できそうなユッカさんは乗り気じゃないのでできませんでした。


 なので次は転移者、転生者が複数人いた場合の対処法をまねて二組にしようと思いましたが、考えている時に傍を通りかかったユッカさんに『これ、転移者が複数いる場合を想定して作ってるみたいだけど、離れた部隊の報告とその対処、そして自分自身の戦闘を全部をこなさないと出来たりしないと難しいけど大丈夫?』と言われて私はうるせぇ!と言いそうになるのをこらえて、白紙に戻しました。そうした紆余曲折を経て、最終的に全員で行動することに決めました。ただし、二組に分かれる方針は一部採用して前衛と後衛に別れて行動するようにしています。


 近距離専門の私とバロックさんを前衛に配置して負担が大きい正面への攻撃を担当して、蛇腹剣と拳銃で中距離をカバーできるユッカさんと重機関銃で遠距離と広範囲をカバーできるセラさんの二人を後衛に配置して、後ろから追ってくる敵の無力化と左右の対処を任せることにしています。


「では、確認も済んだところで行動を開始しましょう」


 全員が頷いたのを確認して私達は一斉に走り出します。前もって町の構図を頭に叩き込んでいるので大丈夫です。駄目押しに転移地点をアイビーさんと一緒に転移した場所と同じところにしたのでイメージがしやすかったので迷う心配が無くなります。後はコソコソゆっくりと近づくとどうしても目立ちますし、何より迷わないことを優先したのでここから目的地まで中々の距離があるで、急ぐ必要があります。


 大通りらしき場所に出ると人影一つありませんでした。アイビーさんと一緒に通った時は夕方だと言うのにそれなりに人影はあったのに、昼間にあるにもかかわらず人っ子一人見当たりません。考えられる物としては逃げたか隠れたかのどちらかと思います。既に転移者を私達が狙っているのは交渉課の奴らが既に伝えていると思いますし、多分領主辺りが外出禁止の指示やら避難する指示を出したのでしょう。急いでいるので民家を覗いてどちらかなのか確認することはしませんが、こうして人が出歩いていないのは楽です。それなら、こちらに向かってくる人は全員敵と言うことで区別が楽なのですから。


「前方に武装した一団を確認しました。屋敷までは立ち止まらずに全力で駆け抜けてください。攻撃は牽制目的でそちらに集中しすぎないように気を付けてください」


 スイッチを入れてバチバチとなるスタンロッドを構えて一団の戦闘にいる明らかに偉そうな装飾がある兵士に向かって振り下ろします。

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