創造課へ
「それで隊長、他の部隊から聞くのに異存はありませんが具体的には何処に向かっているんですか?」
「創造課だ。あそこには転移者が隠れられそうな場所が多い。特に武器を置いてある倉庫とかに行かれると困るから探している部隊も多いだろう」
私としてもカルセさん達のことが少し不安だったので創造課に行けるのは大賛成です。通路を駆けていると今までとは違い武装している他の部隊の人とすれ違うことが多いのですけど、他の部隊の人達が持っている武器が少し気になります。
私達と同じように火器を持っている人もいますが、魔法を使うための杖を持っている人や弓を持っている人もいました。魔法を使っている部隊はあるのにどうして私達の部隊には魔法を使う人がいないのでしょうか?隊長達に聞いても途中ではぐらかされてしまって、イマイチ分かりません。ただ、私が入る前、隊長が隊長じゃなかった頃は魔法を使っている隊員がいたということは聞けました。本当は詳しく聞きたかったのに隊長が別の用事が入ってしまったと言って離れてしまったのでこれ以上の事は知りません。ただ、その話をした時に少し隊長が悲しそうな顔をしていたので、今は生きていないような感じでした。もしかしたらその人の事が原因で魔法を使う隊員を入れていないだけかもしれません。いつかは話して欲しいなと隊長の後ろ姿を見ながら思います。
「さて、到着したが…」
「すごい人数っスね」
創造課のエントランスには冒険者ギルドの中のように人でごった返していました。中にはドローンを持っている人とか、カメラを持っている人もいました。なぜ、ドローンを持っているのでしょうか?こう…ドローンのプロペラからエネルギーのような物が出るのでしょうか?
「とりあえず、近くの部隊に聞こうか」
そう言って隊長は近くにいる部隊と少し話をして戻ってきました。
「転移者の情報はありましたか?」
「いや、ここには来ていないようだ。だが一つ情報は聞けた。どうやら転移者は透明になる能力を持っている様だ」
「透明…」
「ここにいる部隊員のほとんどは、その透明化した転移者を探すためにサーモグラフィカメラを取りに来たようだ」
確かに透明化しているのなら肉眼では見えないので温度が分かるカメラを持っていれば楽だとは思います。それにしても、透明化とかカメレオンみたいですね。
「おや、シェフレラ隊長じゃないですか!」
そう言って人ごみをかき分けながら一人の男性が歩いてきました。
「ヘリオ室長」
隊長は振り返って室長に話しかけます。
「ここに来たということは、カメラをご所望ですか?」
「いや、ここ来たのは転移者が来ていないかと思ってな。ここに置かれている武器を盗み出されたら面倒だからな」
「ご心配ありがとうございます!ですが、心配ご無用!警報が鳴った瞬間Sランク装備の置かれている区画は完全シャットアウトしています!借りに持ち出そうとすると警報が鳴る仕組みですし、そこに行く場所は一本しか道が無いので対策は十分です!」
室長はいつも通りに大きな声を出しながら話しています。いつもなら少しうるさいと感じるのですが、今私達のいる場所は人の話し声が煩いのでむしろちょうどいい気がします。
「少し怖いが、まぁ、第一転移者がここの情報を知ることもないだろうから大丈夫だとは思うが注意して欲しい。特にSランク用の装備の置いてあるエリアはやばいからな」
「本当に大丈夫なんですけど…そうですね、絶対無理とか不可能とかを簡単に突破するのが神から力を貰った彼らですしね。一応見回りをお願いするとしましょう」
「ああ、そうしてくれ。それと、私達にもカメラが欲しいのだが」
すると室長が少し申し訳なさそうな顔をしました。初めて見ました室長のそんな顔。
すみませんすぐには難しいかと、何分急に必要になった物なので、元々あった分はすぐに無くなって今フル稼働で量産中なのですが欲しい部隊が多すぎてしばらく時間がかかりそうなんですよ。今ここにいる部隊も配備待ちでいるんですよ」
「そうか…今ある物ならすぐに渡せるか?」
「はい、出来ますが…先ほど言ったようにカメラの類の在庫はありませんよ」
「いや、別の物だ」
隊長はそう言っていくつかの装備を室長にリクエストしました。室長は懐からメモを取り出して隊長が言っている物をメモしています。
「それなら、普通にありますね!少し待ってください、持ってくるので!」
隊長のリクエスト一覧を眺めた後にそう言って、室長は隊長に背を向けて走り始め人ごみの中に消えていきました。それよりも気になった事があるのですが。
「隊長、ヘリオ室長に話していた装備ですけど何に使うのですか」
私の代わりにバロックさんが聞いてくれました。
「なに、隠れて見つからない害虫をあぶりだすにはこれが一番だからな」
そう言って隊長は、それは爽やかな笑顔で答えてくれました。確かに隊長がリクエストしていた物を使えば探せそうですけど…、転移者が少し可哀想です。
「でも、後処理が大変そうですね~。もしかしたら、施設内がカラフルになるんじゃないですか~?」
確かに隊長がリクエストしていた物にはスプレーが入っていました。普通のとは違って高い温度にさらすと消えてしまうそうですけど、どちらにしても手当たり次第にばら撒いたら、ここがカラフルになりそうですね。
「いや、流石にそこまでやったら休日無くなってしまうだろ。最初は別の使ってあぶりだすぞ」
「それなら、良かったです~」
「お待たせしましたぁ!!」
突然の大声にビクっとして振り返ると室長とカルセさんが、それぞれ箱を持って立っていました。本当に早いですね。もう少し待つかと思っていました。それよりも
「カルセさん無事でよかったです」
そう言ってカルセさんに近づきます。…何かフラフラしてますね大丈夫でしょうか?
「ええ、室長の無茶に付き合って10徹した後じゃなければ私も嬉しかったです」
「あ…」
よく見れば目の下に隈のような物が見えます。
「ええ、本当に、やっと寝れると思って部屋でベットに横なった直後にアラームでたたき起こされてカフェインをぶち込んで同じ部品を組み立てる単調作業に入らなければ最高でしたよ」
ほんとに…ほんとに…と壊れた機械のように同じ言葉を呟きながら、カルセさんは箱を持つ手をワナワナと震わせています。
「あの…お疲れ様です。頑張ってください」
かける言葉が見つからずにオズオズとカルセさんに声をかけます。この声のかけ方で合っているのか不安になります。
「…はい、ですので、早く転移者を駆除して私を眠らせてください。お願いします」
そう言ってカルセさんは箱を置き、背を向けて歩いて行きました。
「ぜ、善処します」
聞こえているか分かりませんが一応カルセさん背中に向かって一礼をしました。
本当にお疲れ様です。
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