神様の休日

「神・・・様?」


目の前にいるのが神様だそうです。しかしあまり実感が湧きません


「・・・そうですね。一応世界の創造と管理をしている神々の内の一柱になります」


そう言って少し苦笑しながら男性が神様であることを肯定します。でも信じられません。目の前の男性が、やたらミスをして人を殺して挙句にそれを隠す神様に見えません


「そうなんですか・・・すみません。イメージしていた神様像とは違いましたし、それにあまり悪そうな感じがしません」


 いきなり神様と言われて信じられるほど私は頭が悪くないと思います。それとも神様だと感じられない程私の頭が悪いのでしょうか?


「まぁそうですよね。この神様、神っぽさがないですから」


 ナギさんがそう言ったので、どうやら私はアホではなかったようなので少し安心しました。


「そう言われましても、私はこの姿が私なので他に何も無いのですが・・・証明出来る事とするなら、私が仕事している所を見せることですかね?それなら今度言ってくれれば管理スペースを見せますよ。それにミスをして隠すのはごく一部だけなので、他はミスをしないか、ミスをしたとしても隠さずに報告して罰則を受けたりしますので、あまり勘違いしないでください」


そう言って少しクロリアさんは朗らかに笑いました。でも本当に神様だとしても疑問が残ります。


「あの、今は世界の管理しなくていいんですか?」


 確か神様は世界の管理をし続けなくてはならないはずです。休暇と言っていましたけど世界を止める事なんて出来ないので、本当に神様なら休暇中の世界はどうしているのでしょうか?


「それは、先ほども話したように休暇中でして、休暇が始まると代わりに世界を管理してくれる方が来てくれるので、その人たちに任せているんですよ。私達は神と呼ばれていますが疲れもしますし、ミスをしてしまいます。なので、その疲れを取るために休みを取って散策したり、自分の管理している世界に降りてみたりするんですよ」


 そう言ってクロリアさんはコツコツと杖で地面をたたきました。確かに神様も疲れたりするかもしれないので休むのは当たり前な気がします。


 それに私はミスをした神様の後処理をしていたので、神様にあまりいい感情を持っていなかったので疑り深くなっていたようです。


「因みにその管理しているのは、この前死体を処理する時に会っていたらしいガスティさん達が所属している殺神隊の内の一部隊が担当するんですよ」


 ガスティさんは隊長とユッカさんと一緒に遺体を『ソ』に返す時にいたポリタンクを持っていた人ですね。ここでガスティさんの名前が出るとはまったく思いませんでしたが神様が持っている世界の管理もできているんですね。でもそうすると、また疑問が出てきます。


「神様じゃないのに世界管理できるんですか?」


 私達でも世界を管理することが出来るのなら神様って必要あるのでしょうか?


「あくまで一時的なものです。向こうにも別の仕事がありますから、そればかりをするわけにもいきませんから。因みにガスティさん達が担当している理由は神殺しを行った後に管理するものがいなくなった世界を次の管理者が決まるまで世界の維持を請け負っているので、管理の仕方を分かっているからです。その代わりに仕事終わりに支給されるお金は多めに渡されますし休みの私達よりも多いです」


「あくまで一時的な管理ということですよ。世界の管理は、ほとんどが結構重労働なのであまり長い間は私達以外では管理しきれないんですよ」


 単純にスペックの問題でしたか。確かに勝手の分からない私達よりも、ガスティさん達に任せた方がいい気がします。


「ところでお二人は、ここにどのような用件でいらしたのですか?」


「隊長のお見舞いです」


 ナギさんがそう言って思い出しました。そうでした私達隊長のお見舞いに来たのでした。


「ナギさん、そろそろ行かないとユッカさん行ってしまいませんか?」


「そうですね。ここの出入り口は一つしかないのでユッカさんに関しては大丈夫ですが、治療が始まってしまうかもしれないので、急ぐことにしましょう。クロリアさん、今度は他の方と伺うかもしれませんので、その時はよろしくお願いします」


「ええ、わかりました。その時が、私が殺される時にならないように気を付けながら待つことにします」


「ええ、私達もそう願っています。では」


 ナギさんは軽くお辞儀をしてから歩き出しました。


「アイビーさんも気が向いたら、いらっしゃってください。お菓子とか準備しておきますから」


「はい、近いうちに」


 クロリアさんは私の返答に満足したのか微笑みながら頷いた後に、踵を返して出口に向かいました。その後ろ姿を見送った後にナギさんを追う為に走りだしました。


「良い人・・・いえ、神様でしたね」


 ナギさんに追い付いて少し後ろを歩きながら話しかけます。


「そうですね。神にも良い神や悪い神がいます。私達が仕事上知るのは悪い神ばかりなので、ああいう良い神にも会わせたいと思っていたので良い機会でした」


 そう言いながらナギさんは私達以外誰もいない廊下をズンズンと前に進みます。次第に消毒液のような鼻につく匂いがしてきました


「それにしても本当に人がいませんね。先ほどのエントランスにはたくさんいたのに・・・」


「この辺りは重症患者がいる区域なので、面会不可の方が多いのであまり人はいません。その代わりに、あれがいます」


 ナギさんが廊下の先を指さしました


 廊下の向こうから駆動音と共に何かがやって来ます。その見た目は人型でした。しかしその皮膚は生き物特有の張りやツヤを感じません。


「ナギさんあれは?」


「特殊ゴーレムのナインだ」


「特殊ゴーレム・・・」


 その内にゴーレムは私達少し前で立ち止まり会釈をした後に、再び動き出して横を通り過ぎて行きました。


「あれの役割は能力課の人の代わりに事務仕事を行ったり、迷子の案内などですね」


「へぇ・・・便利ですね。でも人が少ないんですか?」


 先ほども受付にも人の姿が無いので疑問に思っていたんですけど、ここで働いている人は少ないのでしょうか?


「事務仕事をする人が、ですね。能力課は研究肌の方が多いのでそう言う事務的な事をする人が少ないので、代わりに行っているだけです。派遣しても30日と持たないので、試運転もかねてゴーレムを動かしているんですよ。ただ、医療関係だと患者に寄り添う必要があるのであまり稼働している所はあまり見ないので、珍しいですね」


 ナギさんはゴーレムが言った方向を見ます。


「因みに、まだ試作段階なので他には配備されていませんが、近いうちに各部署に配備されたり、義手の研究にも応用していく予定なんですよ」


そう言ってナギさんは正面を向いて再び歩き出しました。


「さて、もうすぐで着きますよ」

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