疑問
私達は今、記録課の資料を読んだりコピーをしたりするスペースにいます。
「バロックさん渡された物のコピーが終わりました」
「では、隊長の所に置いて来てください」
「了解です」
私はコピーした資料を持ってそのまま隊長の所に歩いていきます
隊長は机に座って難しい顔をしながら資料の再チェックをしていました
「隊長、新しい資料持ってきました」
隊長は無言のまま空いているスペースを指さしました
「えっとそこに置けばいいのですか?」
隊長が親指を立てたので合っているようです
「では、ここに置いておきますね」
「ん、ありがとう」
私はバロックさんの所に戻って資料を探し始めました。
それを繰り返すこと数時間
「・・・あぁ」
そしてしばらくして隊長が積まれる書類の処理をしきれなくなったことでオバーヒートを起こしたのか机に突っ伏しました。
「た、隊長?!」
ええと何するんでしたっけ?心臓マッサージ?いえ人工呼吸?
突然隊長が倒れてオロオロしている私とは違い、ユッカさんは隊長の近くに駆け寄って揺っています。
すると隊長の顔が動いてユッカさんの方を向いて何かボソボソと言っているのでユッカさんが耳を近づけて聞いています。
「・・・なるほど」
少しして聞き終えたのかユッカさんは顔を上げました
「ユッカさん、隊長は何と?」
「転移者の経歴を軽く見て頭痛くなったから少し休むそうっス。今のうちに隊長の後ろにある資料を部屋に運んじゃって欲しいそうっス」
ナギさんは隊長の後ろにある資料を指さして言いました。
「でも、誰かが隊長の様子を見とかないと・・・」
流石に突っ伏して動かなくなった隊長をそのまま放置していくわけいきません
「それは俺が資料まとめながら見とくんで大丈夫っス。なので他のみんなで運んでほしいっス」
「えっと・・・」
「分かりました。ではユッカさんお願いします」
ナギさんはそう言って後ろに積まれている。資料を台車に積み始めました
「言われなくって大丈夫っスよ」
隊長の隣の椅子を引いてそこに座って資料を読み始めました
「では~隊長をお願いします~」
「手を出さないでくださいね」
そう言ってセラさんとバロックさんも台車の積み込みを手伝い始めました
「いや、興味ないっスから」
「ユッカさんって本当に隊長と仲いいんですね」
部屋に資料を置きに行くために台車を押しながら前を歩いている話しかけます
「まぁ同じ時期に作られた同期の様で一番一緒にいますからね」
ナギさん達も台車を押しながら部屋に向かっています。
そう言えば
「そのことで少し疑問があるんです」
「何ですか?」
バロックさんが私の方に振り返って聞きます
「私達の製造番号です。私の場合、製造番号は301655772です」
「そうですがそれがどうしたんですか?」
「少し数が少ないのでは?と思ったんです」
「私達は数えきれないほどの部隊があって、そして私達を支えている創造課などの部署があり、それも数えると結構な数の人が作られています。それにこの世界が作られて結構立っていることが隊長の話で知りました。なのに私の製造番号の最大単位は億です。いくら私達が寿命で死なないとしても少なすぎる気がします」
それに隊長の話では最初に作られた私達の大先輩と呼べる方はもう死んでいると聞きました。
何が死因なのかは聞いていませんが、多分転移者や転生者と戦って亡くなっている方もいると考えているので、その先輩も転移者や転生者と戦って亡くなったのかと思っています。
どれくらいの人が無くなった等は聞きたくないのでわかりませんけど、それでも私の製造番号が億なのは少ないと感じました。
「・・・アイビーさんって実は結構頭がいいんじゃないですかね?」
「そうですね。いつかは気が付くと思いましたが結構早かったですね」
そう言ってナギさんとバロックさんが立ち止まりました。
「え?」
あれですか?余計な事を知ってしまったみたいな感じでしょうか?
「もしかして私知ってはいけないことを知ってしまいましたか?」
私は恐る恐るナギさんに聞きます。
「いえ違いますよ。これは暗黙のルールといいますか、みんな知っていて黙っているだけなのでアイビーさんが知ったとしても問題ないですよ。そうですね・・・アイビーさんに話しておきましょうか」
「結構前の話になるんですけど、私は休日に記録課の資料を眺めていました。その時に隊長と同じ製造番号が記されている方を見つけたんです」
ナギさんは台車を押しながら真剣な表情で話し始めました
「もちろん名前は隊長じゃなく、全く知らない赤の他人でした」
「私達の製造番号は、とある世界の文化の法則に則って割り振られています」
「文化で数字の単位に割り振られている最大単位は不可説不可説転ですが、今まで作られた私達の総数は不可説不可説転を超えていると思われています」
不可説不可説転がどのくらいの物かは分からないですが、とにかくものすごい数
「この世界がいつから始まったのかは一切分かっていません。が、もしかしたら私達の番号は二週目の製造番号で、隊長やユッカさんの番号は一周目の番号なのではないでしょうか・・・と」
それが本当なら
「フフッ」
ナギさんは真剣な表情を崩して笑い始めました。
「すみません少し怖がらせてしまったようですね。今の話には少し嘘があるんです」
「え?」
「本当に不可説不可説転まで作られたのは不明ですが、今のナンバーでも言い切るのは結構大変なのに、実際に不可説不可説転までナンバーが記されたのなら絶対に言いきれるわけないです。なので、隊長達が二週目なのは多分合っていると思いますが、ある程度の数字に行くと1に戻っていると思います。戻す時の基準にしている数字は分かりませんが少なくとも不可説不可説転まではいってないですね」
でもどちらにしても隊長とユッカさんは1に戻ってもう一度自分の番号を抜かしている私が生まれるまでの長い間を生きていると言うことですよね。
ちょっと想像できませんがすごいとしか言えませんね。そう考えるとあの仲の良さも少し納得できます。
「まぁ本人たちには聞いてもはぐらかされるので実際の所は分かりませんけど、多分事実だと思います」
「それは・・・なんと言うか」
あまり現実味の無い内容に言葉を失っているとバロックさんが
「何が起きていたとしても今の隊長なのは変わらないので、いつも通り接していけばいいと思いますよ」
と言いました
「・・・そうですね」
いくら長生きしようと隊長は隊長なので、別にあまり気にすることもないですね。
「それよりも~早く戻りましょ~」
一番後ろの台車を押しながらセラさんが言いました。
「そうですねついでに隊長に水筒でも持っていくことにしましょう」
そう言ってナギさん達がスピードを上げたので私も後を追いました
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます