第三部 カレシカノジョの事情(書籍版2巻の続き、第9章にあたります)
第62話 カレシカノジョの事情
✨✨ここからは、おおむね書籍版の続きになります✨✨
Web版と書籍版は大きなストーリーの変更はありませんが、書籍版は大きく加筆修正をしているため、この先、Web版では登場しないエピソードへの言及もあるかもしれません。
あしからずご了承下さいませ。
(どうしても気になる方は、ぜひ書籍版をお買い求めください!)
✨✨それではどうぞお楽しみくださいませ✨✨
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■5月16日■
春香と千夏がバリバリやりあった今朝の登校をなんとか穏便にクリアし、午前の授業も終えたお昼休み。
「こーへい♪ お弁当作ってきたの♪ 一緒に食ーべよ♪」
4時間目の授業が終わるとともに、前の席に座った春香がくるりと後ろを向いた。
「最近よく作ってきてもらって悪いな」
「うーうん、むしろこーへいにお弁当を食べてもらえるのが嬉しいし。それにこーへいは、か、カレシだし」
「お、おう……」
やめろよな、恥ずかしそうに「カレシ」とか言われると、こっちのほうが恥ずかしくなって顔から火が出そうになるじゃないか。
ちなみにお弁当代は、俺が出している。
正確には、母さんから貰っている俺の昼ごはん代がそのまま春香に渡っている。
母さんからもお弁当に関しては、
『春香ちゃんは手間暇かけて航平のためにお弁当を作ってくれているんだから、ちゃんと材料費くらいは払いなさい。それと感謝の気持ちを毎日必ず伝えるように。春香ちゃんの好意に甘えちゃ駄目だからね?』
って、強く言われたんだよな。
俺としてもそれは当然だと思う。
春香は家政婦じゃなくて、俺の、か、カノジョなんだから。
そして春香の放った単語にクラス中の男子がざわめいた。
「か、カレシだと……? ついに確定してしまったのか……」
「ぐふっ、一言で食欲が吹っ飛んだぜ……」
「春香ちゃんの手作り弁当、俺も喰いてぇなぁ」
「なぁ広瀬、なんでおまえだけ……」
「広瀬、ただただお前が羨ましい……」
「くくっ、月のない夜道は気をつけろよ?」
「なんでだろう、教室の中なのに雨が降ってるよ。あ、俺の涙か」
「広瀬、今日からお前のリングネームは広瀬・レインメーカー・航平だ」
教室中から男子の
微妙に不穏な発言もあったので、全部聞かなかったことにしよう!
「机くっつけるね」
ガタゴトと、いつものように春香が自分の机を前後180度ひっくり返して、俺の机と正面合体させる。
それだけで簡単にお昼の準備は整って、俺は早速、春香の作ってくれたお弁当のふたを開けた。
「おっ、今日も唐揚げ弁当か」
まっ白な白米と、唐揚げを中心とした美味しそうなおかずが目に飛び込んでくる。
「さすがに飽きちゃった?」
「一週間毎日とかでなければ、唐揚げ弁当に飽きることはないと思うな」
「ほんと男子って唐揚げ好きだよねー」
「ほんと好きなんだよ」
いつもと同じ他愛もない会話だけど、彼氏彼女になったことを意識してしまうせいか、なんとも気恥ずかしい。
だがしかし、俺は春香の彼氏になったのだから、ちゃんと言うべきことは言わねばならなかった。
俺は軽く呼吸を整えてから言った。
「春香の唐揚げが、すごく美味しそうに作ってあるから尚更だな」
「うわっ!」
すると春香が突然、驚いたような声を上げる。
「な、なんだよ?」
「だってこーへいがいきなり、そんな歯の浮くようなセリフを言うんだもん。心の準備できてないし」
「俺は春香のか、彼氏だからな。これからはちゃんと言うぞ……多分」
「も、もぅ、こーへいってば教室でなに言ってるのさ……えへへ」
なに言ってるのさ、とか言いつつも満更でもなさそうに春香がにへらと相好を崩した。
「くうぅ……! 見せつけやがってからに……!」
「バカップル警報発令……! バカップル警報発令……! ただちに心のセーフティシャッターを下ろせ!」
「リア充、爆発しろ」
「おいおい、春香ちゃんを巻き込むなよな」
「おっとそうだな。広瀬だけ爆散しろ」
俺たちのやり取りを遠巻きに見ているクラスメイト(主に男子)の視線が痛かったけど、それもまぁしょうがなかった。
だいぶ温かくなってきたし、これからはお昼は教室じゃなくて中庭とかに行ってみようかな?
たしかベンチがいくつかあったはずだから。
そっちの方が人目を気にせずイチャイチャできそうだ。
「じゃあいただきます」
「どうぞ召し上がれ」
笑顔の春香に見守られながら早速、唐揚げを一つ口に入れる。
「うん、今日も美味しい。いや、今日は格別美味しい気がする」
「こーへいのために一生懸命作ったからね♪ ほら、もっと食べてもっと食べて♪」
唐揚げから始まって、アスパラのベーコン巻きや玉子焼きといった春香の手作り弁当を、俺は美味しくいただいた。
あぁ、幸せだなぁ。
俺は彼女になった春香と一緒に食べるお昼ごはんという幸せを、しみじみと実感した。
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