【書籍化】子犬を助けたらクラスで人気の美少女が俺だけ名前で呼び始めた。「もぅ、こーへいのえっち......」【Web版】【コミカライズ企画進行中!】
マナシロカナタ🐈ねこたま25年夏発売予定
第一部 幼馴染に振られた春休み。子犬の少女と出会った高校初日。
第1話 幼馴染に振られた春休み
「ごめん、航平のことは好きとか嫌いの対象に思えないから」
流れるようなサラサラの黒髪をかき上げながら、幼馴染の相沢千夏が告げた思いもよらない言葉に、
「え――」
俺は思わず呆けたような声をあげてしまった。
「航平とは昔から一緒にいるのが当たり前で、もう家族と一緒って言うか。ほら、家族と恋愛や結婚はできないよね?」
「えっと――」
「それに背は低いし、顔もパッとしないし、家ではいつもジャージだし」
「うぐっ……」
「サッカー部は最後まで補欠だったし、あと子供っぽいし」
「あ、はい……」
「だからごめんね航平。航平の気持ちは嬉しいけど、今まで通りの関係でいこう?」
「――――」
中学3年の春休み。
高校進学を前に、幼馴染の
こうして見事なまでに、粉みじんに砕け散ったのだった――。
…………
……
とまぁ俺の初恋は、かくも無残に終わったんだけどさ。
実を言うと、本当に辛かったのはそこからだったんだ。
俺と千夏とは家が隣同士であり、家族ぐるみの付き合いがあったからだ。
しかも千夏の家は両親共働きで、夕飯をうちで一緒に食べることが多かった。
すると、どういうことが起こるのか。
振られた当日の夜、千夏と一緒に晩ご飯を食べた時、俺はもう辛くて辛くて発狂寸前だった。
正直何を食べたかなんて、ちっとも覚えていない。
ただひたすらに張り裂けそうな心を繋ぎとめて、泣かないようにやせ我慢するだけで精いっぱいだったのだ。
何が辛いって、千夏がまるで何事もなかったかのように、いつも通り振る舞ってたことが辛かった。
ああ、本当に俺のことなんて何とも思ってないんだなってのが、これでもかって伝わってきてさ。
俺はその夜、ベッドの中で一晩中泣き
それからも、振られた幼馴染と過ごす中学最後の春休みは、俺の心を容赦なくえぐり切り刻んでいって――。
そして今日は高校の入学式。
校舎の玄関に張り出されたクラス分けを見た俺は、
「良かった、1組と6組だから端と端だ……これで学校では顔を合わせなくて済む……」
千夏が1組。
俺は6組。
新たな門出の晴れやかな気分なんてものは
「少なくともこれで学校で顔を合わせる確率は、ゼロとは言わないけど格段に低くなる……」
そんな風に後ろ向きな思考でずっとうつむいていた俺に、話しかける相手などいるはずもなく(同じ中学の奴らは全員別のクラスだった)。
そうして俺は今、一人トボトボと帰り道を歩いていた。
すでに日は傾きはじめていて、周囲に俺と同じ制服姿は見当たらない。
「ま、それも当然か……」
始業式みたいに学校が早く終わる日は、家に帰ると千夏と顔を合わせる可能性が極めて高い。
なので俺はしたくもない寄り道をして、ひたすら時間をつぶしていたのだから。
夢描いていた幼馴染との心おどる高校生活が、入学前に破綻した俺にとって、
「なんかもう高校とかどうでもいいや――」
これが今の素直な心境だった。
「このご時世、大学進学くらいはしておきたいから、やることだけはやって。後は幼馴染に振られた哀れなミジンコらしく、学園カーストの最底辺で空気のように3年間をやり過ごそう――」
そうだ。
大学は東京じゃなくて、千夏のいない関西の大学でも受験して一人暮らしをしようじゃないか。
そして心機一転、大学デビューをするんだ。
うん、それがいい、我ながらナイスアイデアだ。
「そのまま関西で就職すれば、この苦い思い出ともおさらばさ――」
なんてことを考えながら歩道を歩いていると。
ふと、道路脇の植え込みに子犬がいるのが目に入った。
もふもふ可愛い、小さな子供の柴犬だ。
首輪は付いているものの、リードの先に飼い主は見当たらない。
「逃げ出したんだな……ははっ、俺と一緒で現実が嫌になったのかもな……なんてな。はぁ……」
俺はそうため息交じりに自嘲気味につぶやくと――ちょうど俺の進行方向にいたこともあって――柴犬を何とはなしに歩きながら見ていると、
「おい、ちょっと待て――」
なんとその子犬が、今にも車道に飛び出そうとしていたのが、俺の目に映ったのだ――!
この道は片側2車線の県道で、交通量もかなり多い。
しかし子犬はそんなこと何もわかっていないのだろう、今にも道路に飛び出そうとして――、
「ばっか野郎! うぉぉぉっっっっ!!」
いくら俺の心がやさぐれてると言っても、さすがにこれを見過ごすのは寝覚めが悪すぎる!
俺はサッカー部で鍛えた50m6秒5の俊足を飛ばして、全力疾走で子犬に走り寄ると、
「ギリセーフ!」
すんでのところでリードを
キャウン!
急に引っ張られた子犬が、抗議の鳴き声をあげる。
でも車にひかれてぺしゃんこになるよりはマシだと思ってくれ!
そのまま俺は車道に出かけていた子犬を引き上げると、逃げないようにしっかりと抱きかかえる。
見知らぬ俺に抱きかかえられた子犬は、最初はキャンキャンと鳴いて抵抗をしてきた。
でも俺が優しく声をかけながらなで続けていると、害意がないのが分かったのか、次第に落ちつきを取り戻していった。
俺も一安心する。
――と、そこへ、
「ピースケを助けていただきありがとうございました!」
すぐそこの横断歩道を渡って、道の向こうから女の子が1人、走り寄ってきたんだ――。
――――――――――――――――――
新作『実質同居の幼馴染~』をお読みいただきありがとうございます!(*'ω'*)
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