第34話 増えた仲間達
エイト・M・メンデレー
性別:男性 クラス:【槍使い】
スキル:〔
ステータス:変異 Ⅲ
レベル68(St35+EX33)
体力 8963
持久 12680
頑丈 8452
筋力 10931
技術 14093
精神 16714
「表示、壊れちゃった?」
ラナがキョトンとした顔で、薄いガラス板である『ステータスチェッカー』をつつく。
たしかに数字がやばい事になってる。
が、注目すべきはステータスの数字の大きさではなく、別の2箇所だ。
俺のスキル〔そよ風〕はいつの間にか、頭良さそうな〔電界碩学《でんかいせきがく》〕とかいう謎の能力になってしまっている点がひとつ。
もうひとつは、前々から心配していた病気のほうが進行してるらしいという事。マジでなんなんだよ、変異Ⅲって。
「エイト、このステータス、いろいろと平気?」
「ほら、さっき話しただろ、ずっと深海20,000mの世界でくらして来たって。そのおかげでずいぶんと鍛えられたんだよ」
「それにしても、数字おかしくない? こんなのわたしの何倍も……」
ラナはしょんぼりして、少し寂しそうだった。
ん、そうか、わかったぞ。
自分もステータスをチェックしたいんだな。
「ラナもステータス見る?
俺は親切心から『ステータスチェッカー』を手渡す。
すると、ラナはジト目を向けて、むすっとしてしまった。
「絶対に嫌」
「…え?」
「嫌がらせ? こんなの比べられんじゃん。エイト、性格最悪だよ。ないわー。ん、それに今のわたしはレベルの無いか弱い女の子なんだから。そんなんでマウント取ろうとするもんじゃないよ、うんうん、いや、ほんと!」
「ぉ、すみません……」
ラナの怒りに触れたらしく、怒涛の言葉で責められたあと、ぺちんっと太ももを叩かれる。ラナにタッチにしてもらえてちょっと嬉しくなってる俺は変態でしょうか。いいえ、誰でも。
「もういいよ、エイトなんて。ファリアちゃんとイチャイチャしてればいいじゃん」
「いや、それとこれは関係な…痛ッ、なんでもないです、ごめんなさい……。んっん、ま、まあさ、とりあえず、いろいろ出来る事は増えたんだ。気にしすぎるとは良くないっしょ」
咳払いで気を取り直す、
「その変異Ⅲは放っておいていいわけ?」
「どうだろ。でも、何となくだけど変異Ⅲは悪い変化じゃないと思うんだよ、俺」
「ぐぎぃ!」
かたわらのキングが触覚を元気そうな動かして賛同してくれる。
そういえば、キングのスキンシップ……というか懐き方が前よりも良い感じがする。
俺のことを好きになってくれたのか、あるいは俺の中で変わった何かのおかげか──。
向こうからガアドが戻ってくる。
「地上への帰還の手配だが、もう少しで完了しそうだ」
ガードは携帯端末を見ながら言う。
「どうやって帰還するんだ?」
「潜水艇を使う。海の神秘に捕まらずに海面までいけるよう氷室グループが設計した最新製のモノだ」
「
「そうだ。奴のところの開発状況は、常に私のコンピュータで追っているからな。試作機が完成したことはいち早く掴んでいるのさ。アルカディア随一の科学に頼るのが、お前たちが地上へ戻る最良の選択肢だ」
なるほどな。
アルカディアが海面への到達手段を確立していたことに不安は感じるが、それでも、まあ、一応信頼は出来そうじゃないか。
これで脱出手段は確保できたな。
「それじゃ、次だ」
「ウォルターね。早くあのジジイにわたしのスキルとレベル。返してもらわないと冒険者稼業再開できないってのよ」
頬を膨らませて怒るラナと俺はうなずきあう。
話を飲み込めたない顔をするガアドに、ラナの能力が奪われてしまった訳を説明して、脱出まで今しばらく待ってもらう事にした。
「いいだろう。『統括港都市』の仲間には連絡しておく」
「ありがとうな、ガアド。それで、ウォルターって奴がどこにいるか知ってるか?」
ガアドに尋ねてみると、彼は「私を誰だと思ってる」と自慢げに言って、手元のキーボードをガチャガチャいじった。
壁に乱雑に取り付けられたモニターに、品の良い老紳士の顔が映し出された。
ラナは腕組んだまま「こいつ」と機嫌悪そうにつぶやいた。
「ウォルター・ブリティッシュ。アルカディアの3人のリーダーのひとりで『渇きの王』と呼ばれる男だ」
「『渇きの王』? どういう意味だ?」
「どれどけ富を蓄えても、決して潤いを知らぬ渇いた資本主義の権化、という意味だ。奴はアルカディア内の水ビジネスを一手に引き受けて、都市すべての水の供給を担っている。アルカディアで海水から飲み水や生活のための水を作ってはいけないのは、ウォルターがそういう法律を作ったからだ」
「水を売るのがそんなにビジネスになるのか?」
水なんてそこら中にあるのにな。
「なるとも。飲める水は人間の生存に必要不可欠だからな。まあ、水だけじゃない。このアルカディアじゃ、『酸素』『エネルギー』『マナニウム』の″供給を握ること″が最も金になるビジネスさ。ここに『水』が入ってくる。現にリーダー達はそれぞれの供給を握っている。ウォルターは水道管理区を用いた『水』の精製。パシフィックは海底火山を使った『エネルギー』供給。そして、パシフィックを退けるほど力をつけている
ガアドはモニターに移り変わる画像を、最初のウォルターの顔に戻すと、デスクから離れてロッカーを漁り出した。
彼はロッカーからデカイ銃を取り出し、何やらいかめしい装備を服のなかに忍ばせると、こちらへ振り返ってくる。
俺は尋ねる。
「何してんだ?」
「見ればわかるだろ。私もついて行こう。ウォルターは強力な超能力者だ。それこそ数人しかいない『★★★:トリプルスター』の超能力者。やつのもとへ素人を迎えわせられない」
「え、パパが行くなら、ファリアも行きます!」
「ダメだ。お前は待ってなさい」
ガアドの絶対に連れて行かないという意思を感じさせる言葉。が、全然話を聞いてないファリアはロッカーをごそごそ漁り、銃何丁も持つと、部屋の外へ出て行ってしまった。
ガアドは諦めたようにして「早く準備を済ませろ」と言い外へ行った。
「わたしも銃貸してもらえるかな?」
「俺のあげるよ。使わないからさ」
「ぐぎぃ!」
「ん、キングも行くのか?」
「ぐぎぃ!」
相棒たちの勇敢な眼差しに勇気づけられ、酒場の外に出る。
ラナに小峰マクレインのコルトを渡し、勢揃いした見た目危なすぎる集団を見てうなずいた。何か仲間が増えたな……。
すこし前の暗い海に独りぼっちだった事を考えると、なんだか目の奥が熱くなって来た。いかん、こんなところで何泣いてるんだ。地上に帰るまでが、旅立った我が家での誓いだろーに。
「準備はいいか?」
「ああ。……いや、待て」
ガアドはジャケットから箱を取り出して「失礼」と言いながら、煙草にジッポライターで火をつけて口にくわえると、すごく気持ちよさそうに一服した。
俺たち健康な若者組は「何見せられてるの?」と言いたげに顔をあわせる。
30秒ほどしてブレイクタイムを終えたガアドは「さあ、行こうか」と言って先導して歩き出した。
ウォルター退治。いざ行かん。
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