第12話誕生日プレゼント
「始まったね」
「うん、とっても綺麗」
花火に照らされてにいろいろな色に変わる花音の瞳。
俺はバッグから彼女へのプレゼントを取りだした。
「花音、誕生日おめでとう」
俺は小さくまとまった紙袋を彼女に手渡す。
「ありがとう。開けてみてもいい?」
俺は小さくうなずく。
花音によって少しずつ包装がはがされていくことに緊張感を覚えた。
「ハンドクリーム?」
「その、花音も自炊するようになっただろうし手の荒れとかを気にするかなと思って」
「ありがとう!うれしいよ!」
そして花音は袋の中にあるもう一つの小堤に気が付き手に取った。
「これも私に?」
「......うん」
あまりここでは気が付いてほしくなくて、分かりにくいように置いたんだが、やっぱり重量感でばれてしまったんだろう。
「ネックレス?本当にいいの?もらっても......」
「いいんだよ。そんなバカみたいに高いわけじゃないし」
「うれしい......かけてもらえないかな......」
「いやだよ恥ずかしいし」
「大丈夫。みんな花火に夢中だから」
周りが俺たちを見ていないことをいいことに花音はこれでもかと目を輝かせてネックレスを俺にかけさせようとしてくる。
「わかったよ......」
ネックレスを受け取り彼女の後ろに回る。
彼女の綺麗なうなじが露わになっていて、そこから抱き着くように前に手をまわしてネックレスを首につけた。
「どう、かな?」
「着物に合わせるんじゃなかったな」
笑いながらそう言う。
着物にネックレスはあまり合っているとは言えなかった。
「いいの。それでも」
花音はネックレスを自分の両手で包み込むようにして、目を瞑る。
花音は目を開いて俺に一言。
「ありがとう」
心のこもった一言だった。
◇◆◇
花火が終わると、人々の喧騒が大きくなる。
今の花火の感想だったり、ただの雑談だったり、内容は様々だけど、みんな楽しそうにしている。
「帰ろっか」
「うん」
俺たちも人の波の一部になるようにして歩いていく。
はぐれないように手をつなぎながら、確かなぬくもりを感じて......
「楽しかったか?」
「うん。今までで一番楽しい夏休みだった」
彼女に楽しい経験をさせてあげられてよかったなと思う。
そのあとは夏休みに何をしたかとか、そういうことについて話しながら帰路を共にした。
そして、花音の家の前につくと花音がある一つの提案をしてきた。
「ねえ、司くん。一つしたいことがあるんだけどいい?」
「ん?なんだ?」
「その......一緒に写真撮りたいなって、今日の思い出に......」
「わかったよ。それじゃあ早速撮るか?」
「うんっ!」
花音は自分のスマホを取り出してインカメにする。
画角に入ろうとすると自然と顔が近くなって、カメラに映る自分の顔が赤くなってしまっていることに気づく。
「撮るよ、ハイチーズ」
シャッター音がすると花音は少し俺から離れて写真を確認する。
「司くん、ちょっと目瞑ってるからもう一枚撮ろ?」
そして花音が顔を寄せてくる。
「はい、ちーず」
少しだけ間が開いてシャッタ音がする。
その間に、俺のほっぺに柔らかい感触がした。
カメラに向けていた視線を画面に移すと花音が俺のほっぺに唇を合わせていた。
「じゃーねっ!」
彼女は焦ったように家に戻って行って、数秒後に俺の携帯に花音から通知が入る。
「なんだよ、目瞑ってねぇじゃん」
そこには一枚目に撮られたお揃いのネックレスをかけた笑顔の俺と花音が写った写真が送られてきていた。
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