ウィンドウ・ビュー
墨ノ江なおき
窓の外
私は、いつも窓を眺めている。
授業中も、休み時間も。
学校では、いつも。
じっとしているのは退屈だから、何か興味を引くものを探しては、その様子を観察する。
忙しいはずの部活の時も、窓からのぞく景色に、ついつい視線が向いてしまう。
ふとした瞬間に、誰かと目が合って、不思議がられたり、笑顔を返されたりもする。
そのせいで、集中力がないと、先生や先輩に叱られるのは、申し訳なく感じる。
外は、まぶしい。
晴れている時はもちろん、曇りでも、雨の日も。
私にとって、こちらの世界は、苦しくて、居心地が悪い。
私には、自分の瞳に映る全ての光景が、とても輝いて見える。
私は、時が止まったような世界で、毎日を過ごしている。
遠い昔に別れた、懐かしい皆は、今は、どうしているかな?
幼なじみ、親友、クラスメイト、私を好きだと言ってくれた人……
そして、家族。
「どうしたの?」
「窓の外に、女の子が立っているのが、見えたから」
「ここ、二階よ?」
「そうよね、何かの見間違いかな」
「ぼぅっとしていると、また怒られるわよ」
私に気づいてもらえるのが、うれしい。
ああ、生きている人が、うらやましい。
私は、ずっと、ここにいる。
じっとしているのは、退屈だ。
でも、私の居場所は、教室の中には、ない。
屋上から見た、空の鮮やかな青色が、生前の最後の記憶。
後は、地面に叩きつけられる、鋭い痛みの感触だけ。
私は、ここから動けない。
楽しかった頃の思い出に、縛られている。
了
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