第1章 = “最強”の降臨と魔王との邂逅 =
《おまかせ》が選んだのは“最強”でした
地に足がつく感覚に気がついた
しかし、目の前は真っ暗だった。
(え、なにこれ・・・何も見えないんだけど・・・?)
まだ転送が終わってないかと思ったアスタルテだったが、その耳には虫の鳴く声が聞こえ、そして肌には風の当たる感覚があった。
僅かな光を感じ上を見上げると、そこには
月が少ししか見えず、大半が葉っぱのようなもので遮られているのを見るにどうやらここは木に囲まれた場所らしい。
暗闇に少し目が慣れてきたアスタルテは改めて周囲を見渡す。
360度木に囲まれており、ここは森あるいは林の中なのだろうと予想した。
(なんでよりによってこんな所に・・・しかも夜って・・・)
アスタルテはとりあえず僅かな月明かりを頼りにここから抜け出そうと歩き始めた。
しかし、道もない上にそこらじゅう木だらけである。
自分が今どの方向へ歩いているのかも正直よく分からなかった。
(う~ん・・・流石に何もないただの森なんかに転送なんてさせないと思うし・・・歩いていればいずれは道なり出口なりに出るよね・・・)
アスタルテがぶつぶつ言いながら歩いていると、前の茂みからガサガサと音が聞こえた。
人か!?と思ったアスタルテだったが、流石に夜の森に人なんていないだろう。
ジッと目を凝らし、その正体を確かめようとする。
そして茂みから出てきたのは──────とてつもなくデカイ熊だった。
熊といっても地球で見たものとは違い、立ち上がったら4、5メートルはあるんじゃないかという規格外の大きさだった。
(やばいやばいやばいやばい・・・・!!)
逃げようにも足がすくんでしまい、金縛りにあったかのように動くことができない。
その熊はアスタルテの方を睨むと、ゆっくりとその巨体を持ち上げ、二本足で立ち上がった。
分かってはいたことだったが、立つととてつもなくデカイ。
アスタルテが首を限界まで上げてやっと熊の顔が見れるくらいだった。
(小学生の時に空港で飛行機を目の前にして見上げた時みたいだな・・・)
そんなことをふと思い出したアスタルテだったが、次の瞬間現実に戻される──────
「グオオオオォォォォーーーー!!!!」
耳が張り裂けそうになるほどの大咆哮を目の前で浴びせられ、アスタルテの金縛りは解けた。
「や・・・」
「やべええええぇぇぇぇぇえ!!!」
アスタルテは叫び、熊に背を向け全速力で走り出した!
暗くて前はよく見えないし、木の枝が顔に当たるしで散々だったが、とてもそんなことを気にしていられるような状態じゃない。
後ろからは地響きのような足音と共に木のなぎ倒される音が聞こえる。
それからというものの、アスタルテはひたすらに走った。
2メートル級の熊でさえ時速50キロで走るという。
それが倍の大きさだったら走る速度もそれ以上のはずなのだが、不思議とその差は少しずつ開いていった。
(なんとか振り切れそうだ・・・!)
後ろを振り向き、アスタルテは思った。
だが、後ろを振り向いたせいでアスタルテは地面から顔を出している大木の根っこに気づかず足を引っ掛けてしまった!
(おわあああぁぁぁ!?)
身を投げ出された先は下り坂で、アスタルテはごろごろと転がり落ちた。
やがて大きな岩に背中から激しく衝突し、アスタルテは止まった。
「くっ、はっ・・・あ、ぁぅ・・・」
衝突の衝撃からうまく呼吸ができず、アスタルテはそのまま気を失った──────
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
──────チュンチュン・・・
どこからか鳥の声が聞こえ、アスタルテは目を覚ました。
長く気を失っていたらしく、いつの間にか朝になっていた。
依然として周りは木に囲まれており、ここが異世界だということを思い出す。
(そうだ!熊はっ!?)
追われていたことを思い出し、立ち上がったがそこに熊はいなかった。
「逃げ、切れたのか・・・」
アスタルテは安堵すると、喉がカラカラなのに気づいた。
それもそうだろう、死ぬ思いで全力疾走していたのだから。
ふと横を見ると、木と木の隙間の奥に池のようなものがあるのに気づく。
水を飲もうと向かうと、そこは大きな湖だった。
その陽の光が反射する幻想的な雰囲気の湖に目を奪われたアスタルテだったが、喉の乾きに現実に戻され、湖に
「うわあぁぁ!!」
しかし、手で水を
なぜならそこには見たことない
びっくりしたアスタルテはその少女が湖から出てくるのを待っていたが、待っても出てくる様子はなかった。
ゆっくりと湖に近づくが、もう湖の中に少女はいなかった。
(ホラーかよ・・・!?なんだか気味が悪いな、水を飲んだらすぐ離れよう・・・)
そう思うと、気持ち早めに屈み、再び手を伸ばす。
すると、またそこにはさっき見た少女が
再び後ろに飛び跳ねたアスタルテだったが、ある違和感が頭に浮かぶ。
なぜなら、湖の少女はアスタルテと同じように水を掬おうと手を伸ばしていたからだ。
(いや、まさか、だよな・・・)
アスタルテが湖を覗くと、やはりその少女も現れた。
そして手を伸ばすと、相手も同じように手を伸ばす。
(こ・・・これってまさか・・・)
「俺ええええぇぇぇぇぇええ!?」
森にアスタルテの叫びが響き渡るのであった。
湖の少女が自分だと気づいたアスタルテは改めて自分の顔をまじまじと見る。
(なんだこれ・・・確かに容姿はおまかせにはしたが、見た目完全に女性じゃないか!しかも20歳に設定したのにどう見ても小学生くらいにしか見えないぞ!?)
中性的、美男子という言葉はあるが、アスタルテの顔はどう見ても女性もとい、女の子だった。
それに年齢も20とは程遠く、10~12歳程度にしか見えない。
少し釣り上がった大きな
どこからどう見ても女の子である。
余裕が無くて気がつかなかったが、よくよく考えてみると熊に襲われて叫んだ時も今さっき叫んだ時も、声は結構高かったのだ。
(なにがどうなってるんだ・・・キヤナさん、おまかせはバランスよく仕上がるって言ってたのに、性別と年齢に容姿が釣り合ってないじゃないか!)
アスタルテはその場に寝転ぶと、手を太陽にかざして見てみる。
(手、小さいなぁ・・・それにしても、本当に男なのかこれ・・・)
おもむろに履いていた短パンの中を覗いてみる。
そしてそのまま石のようにピシッと固まった。
──────
「無い・・・」
アスタルテは立ち上がり、パンツごと履いていた短パンを下ろす。
しかしやはりそこには
「無い、無い、ない、俺のオレがないいぃぃぃい!!」
天を仰ぎ、叫んだ俺は、バッと着ていたシャツの襟元を引っ張り中を覗いた。
「僅かだけど・・・ある・・・」
─────アスタルテは錯乱していたのだった。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
しばらくしてなんとか落ち着いたアスタルテは、パンツと短パンを履きその場に座り込む。
(なんでか性別が女性になっているようだ・・・この感じだと恐らく年齢もズレている・・・)
アスタルテは必死にキャラクリエイトの時を思い出していた。
だがどう考えても、性別は男性、年齢は20に設定したのである。
なにか聞き逃しはないかと、キヤナとのやり取りにも考えを向ける。
─────その時、アスタルテの頭にある言葉がフラッシュバックする。
(「ただ、そちらのおまかせはこちらのページの全項目に振り分ける物で──────」)
(「
「ま、まさか・・・」
皮肉にも、アスタルテはこの状態になって初めてキヤナが言っていた言葉とその真意を理解したのであった。
(ということは、種族やジョブもか!?)
アスタルテはなんとか自分のステータスが確認できないかと考えた。
─────すると、思い出したかのように、まるで
『
するとそこには、“詩憐”が設定したものとはまるで違う事になっていた─────
○●○●○●○●○●○●○●○●
✩名前 - アスタルテ -
✩年齢 - 200歳 -
✩性別 - 女性 -
✩種族 -
(種族① - 神 - 種族② - 悪魔 -)
✩ジョブ - オールラウンダー -
(オールラウンダー:全ての戦闘ジョブを極めし者のみが到達できるジョブの頂点。その身は全ての武器に愛され、全ての魔法に愛される。)
✩Lv - 1 -
✩ステータス
HP(体力) - 525 -
MP(魔力) - 450 -
STR(物理攻撃力) - 319 -
INT(魔法攻撃力) - 280 -
DEF(物理防御力) - 342 -
RES(魔法防御力) - 299 -
AGI(素早さ) - 155 -
LUK(運) - 44 -
✩スキル一覧
《任意発動スキル》
・
・アイテム収納 MP消費0 ▽物を好きに収納する事ができる。
・アイテム取出し MP消費0 ▽物を好きに取り出す事ができる。
・|
・フレイム MP消費1 ▽火の玉を放つ。
・エナジーフレイム MP消費1~ ▽力を溜め火の玉を放つ。溜める時間に応じてMP消費。
・フレイムレーザー MP消費5~ ▽非常に高密度な炎の塊を照射する。照射時間に応じてMP消費。
・覚醒 HPが30を下回った際に全MPを消費して発動 ▽一時的にステータスが大幅に上昇し、専用スキルが出現する。
《常時発動スキル》
・魔法強化(極) ▽魔法の威力が大幅に強化される。
・属性反転~炎~ ▽炎系スキル使用時、効果が反転する。
・無詠唱 ▽一度唱えたスキルは以後詠唱の必要がなくなる。
・消化効率 ▽食べ物は即座にエネルギーに変化し、余すことなく吸収される。
・MP効率(極) ▽消費MPを大幅に削減する。
・魔法耐性(極) ▽状態異常効果のある魔法スキル、属性効果を無効化する。
・神の加護 ▽その身体は衰える事なく、
○●○●○●○●○●○●○●○●
「お、おいおい・・・」
正直ツッコミどころ満載すぎて逆に言葉が出てこなかった。
案の定、性別は女性になっていたし、年齢はなんと200である。
種族は神と悪魔のハーフで“魔人”ではなく“魔神”になっていたし、ジョブはなんかとんでもない説明が付いてるし、ステータスがとんでもない癖にレベルは何故か1だし、スキルに関しては完全にチートレベルだった。
その時、チート級の自分のステータスに気を取られていたアスタルテは、気づくことができなかった。
すぐ後ろから攻撃が飛んできていたことに─────
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