異世界で畑無双して世界を畑にしよう

MIZAWA

1章 冒険者の始まり

第1話 爺ちゃんを信じる孫

 厳島太郎(いつくしま たろう)はガキの頃からお爺ちゃんが大好きであった。

 時として祖父は厳しくなったりする。

 怒声を張り上げて殴りかかって来た事もある。

 大抵は太郎が悪い時があって、爺ちゃんはぶつかりあってそれを指導してくれる。


 爺ちゃんと婆ちゃんの家は2階建てであり、

 昔母親が住んでおり、母親の兄と姉も一緒に住んでいたそうで、

 結構昔では従妹たちが住んでいた事もあった。


 そんな時代に太郎は生まれてこなかったけど、

 爺ちゃんと婆ちゃんだけになった時、

 2人は余生を楽しむ為に、よりいっそう畑作業に手を出している。

 爺ちゃんはすごい地主でもあり、大きな面積の土地を持っている。

 爺ちゃんの夢はそこを開拓する事だ。


 よく爺ちゃんは八角形の石を首からかけていた。

 それが何なのか太郎には分からないけど、

 ある時誕生日の日に爺ちゃんはその八角形の石のアクセサリーを僕にくれたのだ。


「いいか、その石はお前の道を示す。だから絶対に無くすな、無くしてもその石はお前の元に戻って来る」


 爺ちゃんがそう言って、

 その日から土地を開拓し始める。

 それはとてつもなく大変な事なのに、祖父はにこにことして、とても楽しそうでもあった。

 本当に不思議な爺ちゃんだと思っていた。


 その頃になると僕は中学3年生になろうとしていた。

 小学生から反抗期で父親と母親と喧嘩していた。


 それでも祖父と祖母は太郎が遊びに来る事を待ってくれていた。


 授業が終わると実家に帰るのではなくて、

 祖父母の家に遊びに行く事が多くなってきた。


 爺ちゃんがトラクタ―を運転している所を見ては、

 すげーなとか思っていた。

 

 すると爺ちゃんは何を思ったのか、太郎をトラクターの中に乗せてくれた。 

 太郎にトラクターの操作方法を教えると。


「これはお前が大人になってから使わてやる」

「楽しみだよ」


 太郎の夢は決まりつつあった。

 畑関係の仕事に就ければいいと思うようになり、

 祖父母がいなくなったらその意思を引き継ごうとも思っていた。

 

 その事を両親に言ったらすごく反対された。

 2人は太郎の頬っぺたをぶん殴ると勘当だと叫び、

 家から追い出された。

 祖父母の家に到着すると、

 祖父が軽く抱きしめてくれた。

 

 その日から色々な荷物を実家から祖父母の家に運び、

 そこで暮らすようになった。

 使っていい部屋は沢山あり、その中の一つを選んだ。


 高校には近くの場所に進学する事にした。


 単位制の高校であり、

 僕は農業関係の単位を沢山取る事とした。


 クラスメイトにも友達が出来るようになってきた。

 2人の友達で、田山君と皆沢さんであった。

 田山君は生粋のスポーツ青年であり、サッカー選手になるのが夢なのだとか、

 夢を語る田山君は最高でもあった。

 一方で皆沢さんは誰が見ても美人といえる部類で、

 髪の毛は後ろで縛ってポニーテールにしている。

 色々と校則が厳しいという事もあり、ロングヘアーにすると注意されるのだとか。


 いつも3人馬鹿トリオで高校の授業を真面目に受けていた。

 3人共勉強に対してはすごく馬鹿そのものであった。


 皆沢さんは看護師になるのが夢で、

 早く大学に行きたいと言っていた。 

 でも今から馬鹿だと困るよと告げると、ぷんすか怒りながら笑っていた。


 そんな当たり前な毎日だったのに、

 それを破壊したのは、国という政府であった。


 祖父母の家に帰る途中で、

 それは起きた。

 沢山の警察車両が停車しており、

 特殊部隊のような人達もいた。

 そしてなぜそのようになっているのか? 

 祖父母が震えながらこちらを見ていた。

 

 太郎は走り出すと。

 祖父母が帰れと口で呟く。


 でもと考えていて、突っ切る事にする。

 すると特殊部隊の人がこちらに気付いてやってくる。


「君はお孫さんですね?」


 特殊部隊の隊長さんは冷たい声で話しかけてきた。


「一体何があったのですか?」


「お爺さんは畑を作りすぎたので、新しく出来た条例にのっとり逮捕させていただきます」

「それ可笑しいだろ、この土地は爺ちゃんのもので」

「国が買収したのです。のでこの土地はお爺さんの物ではありません、お爺さんはその忠告を再三にわたって無視してしまったのです。最初は警告し、次は実力行使です」


「なんでこの土地なんだよ」

「それは軍事機密で何も言えません、ただ言えるのは」


「それは……」


 特殊部隊の隊長さんはこちらを見て、

 ごくりと生唾を飲み込んだ。


「異世界があるのかもしれません、冗談ですが」


「意味が分からないよ」


「実はこちらとしましても理解出来ない事だらけなのです。そうだ何か祖父から石みたいなものを貰いませんでしたか?」


 太郎は真っ青になりながら、

 ゆっくりと頷く事はしない。


「知りませんよ」


「そうですか、何かありましたらここに電話してください」


 特殊部隊の男性がこちらに名刺みたいな物を差し出してくれた。

 八角形の石は現在ポケットに入っている。

 まさかあれが何か鍵なのだろうか?


「お爺さんと会話は出来ませんが、お婆さんとなら会話は出来ますよ」

「いえ、止めておきます」


 太郎は意気消沈して、後ろの坂を上り始めた。

 爺ちゃんはあの年齢で刑務所に入るのだろう、

 なんで無理矢理にでも畑を作ろうとしたのだろうか?

 理解に苦しむ、だが脳裏に色々な物がよぎる。

 

【お爺ちゃんにはね不思議な力があるの】


 小学生の頃に祖母が言っていたこと。


【お爺ちゃんは次に起こる事を感じる事が出来る。しかしそれがいつかは分からない】


 つまり爺ちゃんはあそこを畑にしてまでやらなくてはならない事があり、捕まる所までは予知出来ていなかったという事か? そもそも本当に予知の能力なのか?


 太郎は1人で考え続ける結果、 

 何もかも分からず、

 近くにあるネットカフェで寝る事にした。

 次の日高校に向かっていた僕は全てが壊れるのを音を立てて聞いていた。



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