これは誰かの夢日記

俄雨 無比偉

序章 おやすみなさい。はじめまして。

「……………はぁ。」


12月21日、22時。

疲れきった体をベッドに沈める。


今日は1日を通して、高校で所属しているバレー部の練習だった。

疲労で体は石のように重い。


谷津 秋人、17歳。

趣味は読書。彼女はいない。


スクールカーストの真ん中より少し下に位置する、どこにでもいるような平凡な高校生。

それが秋人だ。


「…もう寝るかぁ。」


いつもならここから本を読むのだが、今日はもう休むことにした。


疲労がピークだったのか、目を閉じて数分で眠ることが出来たようだ。


今日もお疲れ様。おやすみ。


******************


さて、ここで訂正しなければならない。

確かに秋人は総合的に見ると平凡な高校生だ。


…ある1つのことをのぞいて。


******************


意識が飛んで暫くした後、

どうやらいつものように夢を見始めたようだ。


…秋人は少し前から、おかしな夢を見る。

いくつか特徴がある夢だ。


1つ目。

夢を夢であると自覚していること。

いわゆる「明晰夢」と呼ばれるものなのだろうか。

夢の中で、ある程度自由に動くことが出来る。


2つ目。

体がなぜか他人であること。

この夢はいつも、秋人ではない誰かの朝から始まる。まるで、自分の魂がその人に乗り移ったかのように。



夢の中で、誰かになる。

今日はどんな人だろう。

はじめまして。



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