習作(詩)

石川あかり

一、まど

くもりぞらの 湿気と共に

窓から みかんの花が

かおってくる


くもりぞらの 心許ない

陽光が わたしの部屋を

灰色に照らす


くもりぞらの 淋しさからか

小鳥が短く 細く鳴く


てのなかの 黒いまどは

みかんのかおりを 届けない

部屋を綺麗に 照らせない

鳥のこえも 聴こえてこない


でも


このまどは 世界の裏側まで

覗くことができる


このまどから

知らないひとと 語り合える


このまどは いろんな色にひかって

わたしにすべてを 見せてくれる


でもなによりも このまどは

勇気をつかえば 話しかけられる


この世界にいるなら

気持ちがあれば 繋がれる


まどの左下に きのうからうつる

おやすみ

四文字の あの人の 声が

耳のなかで 聴こえる


活字でできた 四文字が

やわらかく いじらしく

わたしの鼻先をくすぐる


てのなかのまどは わたしに

安らかな

かけがえのない

ことばをくれる


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