#3 付き合いたいってこと...?
でも、今回は今までとは何か違う気がする。なんていうか、有季さんともっと一緒にいたいと思う。一緒にいて、たくさん話して、たくさん笑いたい。自分に完璧の仮面を張るんじゃなくて、ありのままを見せたい。
英語の授業が終わり、次の数学の授業が始まっても、悠也はずっとそんなことを考えていた。
それって、付き合いたいってことだよな...
付き合うには、もちろん告白しなきゃいけない。でも、まだ顔を合わすので精一杯だ。呼び出して、面と向かって自分の思いを伝えるなんて想像しただけでも無理だ。
何で中学生の頃にもっと女子と喋っておかなかったんだろう。今更だが、自分の恋愛経験のなさを恨む。女子と話すのがダサいだなんて、今からしたらばかげていた。内心で頭を抱えたのと同時に、
「じゃあ、悠也。ここの答えを教えてもらおうか」
先生の鋭い声が飛び込んできた。慌てて黒板に目を移し、先生の指差す先を見る。しかし、答えがわからない。というか問題の意味からわからない。
それもそのはず、授業なんて全く頭に入っていなかったのだから。
「悠也どうしたあ?」
「さっき言ってたばかりだろ」
周囲のクラスメイトが、これ見よがしにヤジを飛ばしてくる。
入学して1ヶ月で、完全にいじられキャラが定着してしまった。中学生までは、どちらかというと自分がツッコミだったのだが。まあ僕がいじられることを異常に嫌がったからだけど。
「悠也ぁ、カンでもいいから答えてみ」
クラスのリーダー格である高末陽太《たかすえようた》が、ニヤニヤしながら言う。
「えーと...7とか?」
途端に、教室がドッと沸く。
「おいおい、なんでこの文字式の答えが整数になるんだよ」
「ぎゃはは、やっぱおもしれぇー」
カンで答えろつったの誰だよと内心思う。僕ばっかり標的にするなよとも。特に、先ほど振ってきた陽太なんて、完全に悠也を狙い撃ちだ。真面目に間違えるところが面白いのだろうか。わからない。
はあっとため息をつくように首を傾けると、隣では有季さんがこっちを見て爆笑していた。笑いすぎて涙が出たのか、目元を曲げた人差し指で拭っている。
その曲げた人差し指越しに、目があった。すると、また笑い出す有季さん。そんなに面白かったか!?
だけど、その姿を見ていたら、怒りが収まってきた。しかも、なぜか嬉しさが湧き上がってきた。笑われて嬉しいのは初めてだ。
確かに、有季さんのこの姿がみれるなら間違えて良かったと思えなくもない。
悠也は、心の中で密かに陽太に感謝した。
____________
続く...
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