きみの隣にいるだけで幸せだったと気づいたのは
はれごん
#1 きっかけは、席替えでした
― 高1の5月、僕は初めて本当に人を好きになることを知った。
僕の名前は、
この春に、高校生になったばかりだ。
僕は、この近辺ではそこそこ有名な進学校である、
今は入学から1か月がたち、中学生の頃とは違う授業や部活にもそろそろ慣れてきた頃だ。
そして、今は授業中なわけだが、僕はさっきからチラチラと隣の席ばかり見ている。
きっかけは、席替えだった。
僕と有季さんは、教室の1番後ろで隣同士になった。1番後ろといえば、誰もが羨む特等席だ。授業中に寝ていても、何か別の作業をしていても先生に見つかる心配が少ない。僕は、くじ引きでその大当たりの席を引き当てた。
しかし、それ以上に幸運だったことを知ったのは、たった今、英語の授業の時だった。隣同士でペアワークをすることになり、僕と有季さんは机をくっつけた。ぷっくりとした涙袋と、ふわっと首筋に流れる髪。「綺麗な子だな」というのが、第一印象だった。
もしかしたら、その時から僕は有季さんのことを気になっていたのかもしれない。普段なら絶対にそんなことはしないのに、自分から「よろしくお願いします」と声を掛けた。有季さんは「よろしくお願いします」と、目を細めて挨拶を返してくれた。
そこからは、何をするにも隣の有季さんが気になってしまう。気がつけば、僕はいつもより丁寧な字で文章を書いていた。隣の有季さんは、ちょこちょこと細かく手を動かして女の子らしい小さな字を書いていた。
目が合わないよう注意しながら、チラチラと左を見る。肩より少し上の長さのふわっとしたショートヘアの間から見える授業を真剣に聞く目。そんな目に似合わない優しそうな口元。
可愛いと綺麗の間といった感じだろうか。
「じゃあまずは隣同士、英語で自己紹介をしてもらおうか」
という先生の言葉で、ペアワークが始まった。しかし、英語が得意ではない悠也としては、英語で自己紹介というのはやめて欲しかった。英語の授業だから英語を使うのは当たり前なのだが、有季さんにカッコ悪い所を見せてしまうことになる。
内心そんな不安に駆られながら有季さんの方に体の向きを少し変える。有季さんもこちらに少し体を傾けてきて、目が合った。
__________
続く...
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