期間限定のお嫁さん【完結】

織山青沙

第1話 謎のイケメン

 梅雨も終わり気候も暖かくなってきた7月末。


 ──彼女は災難に見舞われる。



「あ、ごめんなさい」

「あん? ごめんで済むなら警察いらねぇんだよ! どうしてくれるんだよ」

「す、すいません……」

「聞こえねぇんだよ! クリーニング代として10万払え!」

「(10万……そんなお金、払えないよ……。どうしよう)」

「……」

 


 高校が休みのため、彼女は一人街へ散歩に出かけていた。


 その際、大好きなソフトクリームを購入した。


 買ったばかりのソフトクリームを一人で食べ歩きしていると後ろから来た団体に押され彼女は左斜めにいた人物にぶつかった。



 それが先程から怒鳴っている男だ。


 彼女の背丈は150cmと小柄で痩せ型に比べ、男は背丈が180cmもある大柄でガタイが良い。


 格闘技などやっていそうな程、筋肉がついている。



「黙ってないで何とか言ったらどうだ!」

「(どうしよう)」

「どうされましたか?」



 気づくと周りに人だかりが出来ていた。


 だが、誰も助けることなどしなかった。


そんな中一人の男性が声をかけてきた。


「……あ、あの」

「(うわ……イケメン。顔整ってる……ってそうじゃなくて!)」

「ああ。この姉ちゃんが俺の一張羅を汚しやがったんだよ。だからクリーニング代として10万をだな……なに?」

「10万円ですね。では、そちらは私が立て替えますのでこの子を見逃してもらえませんか?」



 なんとそのイケメンはあろう事か財布から1万円札を10枚……。


 合計で10万円を男に渡したのだった。



「(え……な、なんで財布から10万円が出てくるのよ……)」

「……わかった。今回は兄ちゃんに免じて見逃してやるよ」

「ありがとうございます」



 そのイケメンは男の姿が見えなくなるまで見ていた。



「(あ、お礼……言わなきゃ)」

「あ、あの……助けて頂きありがとうございます」

「ああ。そうだな……10万円代わりに支払ってやったんだ。この礼はちゃんと払ってもらうからな」



 男から視線を外し彼女に向けたイケメンの顔は先程と打って変わり眉間にシワを寄せていた。



 ──そして喋り方も……先程、助けてくれた男性とはまるで別人のようだ。

 

 

「(もしかして……私とんでもない人に助けてもらったのかな……?)」

「ああ、俺だ。今から頼む。場所は──よろしく」



 そのイケメンはどこかに電話をすると再度彼女に視線を向けた。



「よし、行くぞ」

「え、ちょっと離してください!」

「いいから来い!」

「(ど、どうしよう……)」


 イケメンに手を引かれ彼女は大通りへと出た。



「乗るぞ」



 大通りの路肩に停めてあった車に乗り込むイケメン。


 そして連れ込まれる彼女。


 一体なにが起きているのか彼女は知る由もなかった。


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