第66話 テンション崩壊
さぁ次はだいか。
あー、ドキドキするな!
コンコンッ
ゆきむらに続き、だいもノックスタートか。なんとなく、性格でてるなー。
「はいるわよ」
「お、おう」
ちょっと冷たい言い方に聞こえるが、恥ずかしそうな声だった。
だがちゃんとみんなで決めたルールは守るらしく、ゆっくりと開いた入口の扉から、待ちに待っただいが現れる。
「おおおおお……!」
自然と溢れる感嘆の声。
自然と身体が起き上がる。
やばい、これはやばい。
あ、起き上がるって足で立ったって意味な!
勘違いすんなよ!
「じ、じろじろ見てんじゃないわよ……!」
部屋の中ほどまで進み、そこでだいは足を止めたが、うわ、恥ずかしそうな表情も、やばいな!!
「も、もう着替えるから!」
「あああ! ま、まって!」
「は?」
「い、いや、その、うん」
「何よ? はっきり言いなさいよ」
「好きです」
あ。
や、やっちまったああああああああ!!!
やばいやばいやばい、あまりの可愛さに思わず心の声があああああああああ!!!!!
「え!? なっ、え!?」
やばい勘違いされる! だいドン引きしてるじゃん!!!!!
な、なんとか誤魔化さないと!!!
「チャ、チャイナドレス、俺、めっっっちゃ好きなんだ!!」
って! これはこれでドン引きだろ俺!!!!!
し、しかしこれは真実。変えようのない事実……!
まさかここでドンピシャで
スリットの入った青いチャイナドレス姿のだいは、惜しげもなくそのスタイルの良さを伝えてくる。自然と胸に視線がいくのは、もはや止めようがない。
身長がもう少しあったら、とかも思うけど、欠点がないとかね、よくないからね!
しかもですよ!?
猫耳のオプション付きなんですよ?
これはこの前のだいの猫語を知っている俺としては評価が高い!!
思い出補正で5割増しだ!!!
俺のテンションが爆上がりするのも許されるだろ!!!!
ああ「にゃあ」とか言ってくんないかな!!!!!
「そういう意味ね……」
「え? 何?」
「何でもない! で、でもそんなに喜ぶほどなのね」
「あ、いや、キモくてごめん。でも、ちょっと可愛すぎてびっくりした」
「え、何よ? 急に褒めないでよ! そんなにおだてたって何も起きないわよ!?」
「ああ、ごめん……。いや、でもマジで似合ってるよ」
「そ、そう……ありがと」
「しかも猫耳とか、むしろありがとうございます」
「何よそれ……」
「いや、うん、マジで可愛い」
「……ほんとに猫耳好きなのね……」
「え?」
「なんでもないわよ!」
ああ、これは眼福だ!
俺はこの日のために頑張ってきたと言っても過言ではないかもしれない!!
あー、写真撮りたいけど、いや、さすがに他のみんなの撮ってないし、ああ、くそ、撮らせてもらっときゃよかった!
「でも……よ、喜んでくれて……う、嬉しいにゃ」
「へ?」
ちょ、今、なんて、え!?
嬉しい「にゃ」って、えっ!?
「も、もっかい言って!」
「言わないわよ馬鹿!!」
「お願い! ちょっとだけでいいから!!」
「嫌です!!」
全力で「馬鹿」と言われても今の俺には効かないぜ!
俺は倒れん! 俺は、欲によって立ってるからな!!
「おいおい先っちょだけとか卑猥なやりとりしてイチャイチャしてんじゃねーぞー。逮捕すんぞ」
「言ってねえよ!?」「してないわよ!!」
俺がだいのコスプレに夢中になってる間に、再びぴょんがコスプレ衣装のまま部屋に戻ってきた。
そしていきなりのぴょんの言葉である。
ほんともう、名誉棄損だ!
「本命は強し、だね~」
「巨乳美人のチャイナは、強いですね……」
続けて戻ってくるゆめとゆきむら。
あ、みんな揃うとあれだな。壮観だし、幸せだなこれ……。
みんなが戻ってきたので、とりあえずみんなソファーに座ったのだが、最初の陣形とは変わり、今度は俺の両サイドにゆめとゆきむらが座り、ゆめの隣にぴょん、ゆきむらの隣にだいが座った。
コの字型のソファーなのに、平行に位置するソファーには誰も座ってない密集度である。
何これ? そういうお店?
「ゼロさんの好みの衣装は、チャイナだったんですか?」
「え? あ、まぁ、うん」
「なんだなんだー? これが愛の力かー?」
「はぁ!? そんなものあるわけないでしょ!!」
ぐさっ
だいの言葉が俺の胸に
あぁ、さっきの可愛かっただいはどこへやら……!
「わ、私はただ……昔ゼロやんと実装してほしいイベント装備の話をしたことがあったから……お、覚えてただけよ!」
え? そ、そんな話したっけ?
え、いつだ……?」
「イベント装備って、最近あんまし出てないけど、それいつの話~?」
「え、えーと……3年前くらいかしら」
「いや、そんな前の話覚えてるとか、もう愛だろおい」
「ち、違うから!」
さ、3年前……え、やべぇ、俺も覚えてないのに……だいのやつ、記憶力すごいな……。
「猫耳もそのときの情報なんですか?」
「おいおいゆっきー、決まってんだろ?」
「そうそう、ゆっきーはまだ甘いな~」
「どういうことですか?」
うん、ゆきむらに同意。
「どういうもこういうも」
「本命から
「はぁ!? ……そ、そんなわけないじゃない……」
マジで何言ってんだこいつら……だいも完全に呆れてるじゃん。語尾は最後ごにょごにょしてて何言ってるかわかんなかったけど。
まぁきっと、この前俺が猫好きって知ったから、確実に勝つために付けてくれたんだろうな。
うん、優勝はだいです。文句なし!
「セシルさんは元カノでも、争奪戦参加者なんですか」
「あー、参加者なのか? ゼロやん」
「知るか! 俺に聞くな!」
ほんとは知ってるけど!!
一番明確に参加表明してきてるけど!!
あ、やめて! 変な目でこっち見ないでだい!!
「ゼロさんはモテモテですね」
「ノーコメントで……」
「じゃあ審査員長。優勝者発表を」
え、俺の口から言うの?
いや、そんなの決まってるじゃん。どうせみんなも分かってるだろ?
コスプレ姿のみんなの視線が俺に集まる中、ご丁寧にやってくれているぴょんのドラムロールの声真似に合わせ、俺はゆっくりと、だいの名を口にしようとした。
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