第3話 その頃の真木剣(1)
一方その頃、真木家。
「いただきます」
ウィンドウの前にいた生徒こと、真木剣は夕食にありついていた。食卓を囲むのは彼の実母である
家が隣である鏡と珠は両親が仕事の都合で不在のため、食事の時は真木家に厄介になっているのだ。
「すまない、お母様。諸用で手伝いが遅れてしまって」
「いいのよ。むしろ最近手伝ってくれるようになって、おばさん嬉しいんだから」
この家の家事は主に月夜と鏡が担当している。本来は月夜一人で回せるが、鏡が花嫁修業の為手伝いを買って出たのだ。
そのため剣、珠、椋の三人はやることが無く、家事能力をこれっぽっちも持っていないということを付記しておく。
「しかし、あの転校生さん凄いですね。美香さんに気に入られるなんて」
「確かにね。一緒にいたはずの私達ですらあんなことないのに」
「へえ、転校生が来たの。男?女?」
「男だ。東側から来たくせにこっちの言葉が流暢でな。あと武先生に一発で勧誘された」
「武君、まだ懲りないのねえ。で、鏡。あなた覗いてどうだった?」
月夜の言葉を受けて顔をしかめる鏡。同時に箸を止め、険しい顔つきになる。
「……簡潔に言うと、読めなかった。何も無いんだ。あの転校生の中は」
「無い?そんな人間有り得るの?」
「有り得ない。通常ならば」
「通常じゃない。ってことだろ、俺達みたいに」
「もっと正確に言うと、私達で言うところの美香さんや宇野みたいなものだ。全ての事象から無意識に次の行動や思考を選択している。あれでは私の方がパンクしてしまう」
剣の軽口を受けてムキになる鏡。剣はその捲し立てられた言説に頭がパンクしそうになる。この男、あまり頭はよろしくない。
「訂正、美香達みたいに。ただ者じゃなさそうだが、そんな奴を美香が招き入れるとは到底思えん」
「美香さんが明日死体で発見されていたら始末しましょう」
「椋、さらっと酷いこと言うな。それに美香に勝てる相手を俺達がどうこうできるわけない」
「本当に剣は美香ちゃんのことが大好きねえ」
月夜の発言で他の三人が一斉に剣を怪訝な目で見る。食堂が常人ならば失禁しかねないほどの殺気で満たされている。
「ばっ……母さん何言ってんだよ!?」
「私は早く孫の顔が見たいだけよ」
「そこまで飛躍する!?」
「剣……私とは遊びだったのか?」
「遊びも何もねーよ!」
「剣君、サイテー」
「だから何もねーよ!」
「兄さん死ね」
「死ね!?」
その光景を見て笑いながら酒を煽る月夜。完全に息子のノリ突っ込みを楽しんでいる。剣は早々に食器をシンクに置き、食堂を出ようとする。
「もういい!こんなとこいられるか!俺は寝るぞ!ごちそうさん!」
「そう言ってまたネトゲで美香さんと遊ぶ気でしょ。あっ、私も後で行くから待っててね」
「剣、夜の遊びに飽きたらずお前……」
「しつこいよ!」
そして、剣は自室にダッシュで駆け込んだ。そしてすぐさまパソコンの電源を入れる。
「……まあ、美香と遊ぶのは本当だけどな」
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