神器異変
うぃんこさん
第1章 ウィンドウと学園生活
AP2028年4月4日
第0話 ウィンドウと任務受領
結論から言おう。この八幡市という行政区全体がアウトサイドの巣窟である。
それもただのアウトサイドではない。外神から力を授かったアウトサイド第一世代。通称『神』及びその被造物『神器』のみで構成された極めて危険な領域だ。
弊社の全戦力を以ってしても勝算は低い。幸い現地の神々は転生神となっており東側及び他国への侵攻は不可能。現地民は比較的友好的ではあるが、外来人に対しては排他的だ。
彼らの領域を侵攻して得る物は何も無い。滅さなければならない程害は無い。彼らは放置しておくべきである。下手に手出しする方が、かえって不利益を被る事となろう。
神器異変 AP2028年4月7日〜AP2029年4月月1日 冒頭部より抜粋
ウィンドベル本部某所。プリスがネクターの下へ飛び立っていったすぐ後、ウィンドウは任務の説明を受けている。
「というわけで、ウィンドウさんにはここへ転校生のフリをして潜入していただきます」
「あんだと?」
狭い部屋にはさわやかそうな青年とそれに瓜二つの目付きの悪い男。そして全身真っ黒のさらに目付きが悪い男……こと、ウィンドウ。
「俺が?高校生?もう40歳越えだぞ、トシを考えろ。お前の方が適任じゃねえか」
ウィンドウはさわやかそうな青年に食って掛かる。しかし、青年はその穏和な笑みを絶やさない。
「大丈夫ですよ。ウィンドウさんならまだ10代で通りますって」
「それに、潜入隠密暗殺はお前の得手だろうが。フィーネじゃ一日と経たずバレる」
「そうですね。オーヴァーチュアだとしてもすぐ学校の女の子に手を出して台無しになりますし」
「てめえ」
さわやかそうな青年……こと、フィーネ・ファルセットと、目付きの悪い青年……こと、オーヴァーチュア・ファルセットはそれぞれウィンドウを諭す。
彼らは代理人組織ウィンドベル総務部の職員であり、代表であるピエット直属の部下にあたる。部署違いとはいえウィンドウも上司に当たる。
何故ウィンドウより位が下の彼らが任務を言い渡しているのか。それは最高責任者であるピエットから業務を丸投げされたからである。本来ウィンドウに任務を言い渡せるのはピエットのみだ。
ただ、ピエットは自分の行う業務を部下に任せきりにする悪癖がある。だから信頼出来る部下二人にウィンドウへの伝達という重大な役目を任せたのだ。
「そんなこと言ったら俺も手を出しかねんぞ無意識で」
「そこは手を打ってあります。ご安心ください」
フィーネは未だ笑顔を絶やしていない。ウィンドウはこの状態のフィーネが非常に苦手である。これは断固として拒否は受け付けないというサインだからだ。
「……わかった、わかったよ。で、どんぐらい見張ってりゃいいんだ?」
「そうですね、ざっと一年」
「……ああん?」
ウィンドウはフィーネを睨む。それでもフィーネは笑顔を崩さない。オーヴァーチュアは無言で「やめとけ」のサインを送る。しかし、ウィンドウも譲らない。
「ふざけんな。アリアはどうすんだよ。俺がいないと1週間で干からびるだろ」
「そこはなんとか帰ってあげて下さい。大体そんな事言ったらウィンドウさんだってこっちに顔出すの年一回じゃないですか。しかもその日は決まって新人の面接の時だけ。なんですか、サボってないと死ぬ病気にでもかかってるんですか。それ以外に忙しい理由は無いんですか」
「うぐっ」
「依頼受けようとしたのも手のかかる娘さんの養育が終わって自由になったからとかいうふざけた理由でしょう?そのためにはウィンドウさんしか出来なくてウィンドウさんが最も適性があって最も難易度の高い任務に赴くのが筋ってもんでしょ。下級エージェントに回されるような日雇い仕事でチマチマ稼ぐなんてことは二度と許しませんからね」
ウィンドウはいつの間にか正座してフィーネの話を聞いていた。かつてはウィンドウに全く逆らえなかったフィーネも最高責任者から丸投げされた職務を全うするうちに反骨心を内面に蓄えていたのだ。つまるところ、八つ当たりである。
「一年間という期間は別にウィンドウさんへの罰として設定したわけではありません。卒業までしっかり居ることで怪しまれずに去ることが出来るからです。分かりましたか?分かったらとっととそこの支給品持って引っ越す。いいね?」
「いや、それだけじゃなくてプリスがいつ帰ってくるかも……」
「その時は連絡を入れます。いいね?」
「……はい」
ウィンドウは指示された通り、用意された荷物を担いで部屋から出た。フィーネは今まで作っていた笑顔を解き、冷や汗をかきながら深呼吸を何度もした。
「ハーッ……ハーッ……こ、怖かったよ……」
「お疲れ。いやあ、ウィンドウ相手にあんだけ言えるようになったとはフィーネも成長したもんだ」
「今にも世界をまるごと終わらせそうな気分だったよ!必死だったんだよ!」
「やめろ、お前が言うと洒落にならん」
もはや過呼吸の域に達したフィーネの深呼吸をオーヴァーチュアが背中をさすって落ち着かせる。
かつて終わりの外神として畏れられた彼の情けない様子を、始まりの外神である彼はただ複雑な面持ちでなだめてあげることしか出来なかった。
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