734.色々キノコ

 コカトリスはさっそく、倒したイエローアンブレラを試食していた。


 もちゅもちゅ……。


「ぴよぅ……」(なんか味はあるけど、粉っぽい……)

「ぴよっぴ……」(思うにこれはまだ成長途中で、なんというか……青っぽい……)


 ちぎって食べるものの、微妙な表情をしている。


「評価はあんまりなんだぞ」

「ぴよ。ここに来てから、そんな感じぴよね」

「食用のキノコは、それほど多くはないからな」


 レイアも同意して頷く。


「基本的にここのキノコも薬用、実験用、魔物相手の毒用ですからね。食べても味は……その……」

「根っこよりはいいですよ」


 ステラが恐ろしいことを言った。どのようなサバイバルをしてきたか、うかがい知れる。


「ここのキノコの中には、いい接着剤になるやつもあるんだよ」


 ナナがふぁさっと羽を動かす。


「この着ぐるみの毛の補修にも使えるんだから」

「ウゴ、そこを考えると有用だね……」


 ザンザスでは特に需要あるだろうな。食用には不向きなキノコが多いが、利用法はしっかりあるということか。


 試食を終えたコカトリスがぽよぽよと戻ってくる。


「ぴよ」(ここのキノコはいささか微妙ですね)

「ぴよよ……」(ダイエットにはちょうどいいということで……)


 その後も数回、キノコの魔物と遭遇したがどれも瞬時に戦いは終わった。


 どれも毒を持っていたみたいだが、ステラとナナ、コカトリスには関係ない。進みは順調だ。


 しばらくして広間に出る。


「ここが休憩ポイントですね。さすがにキノコが来るかもですから、お昼寝は無理ですが」

「そうだな。身体を少し休めるだけになるが……」


 しかしそれが重要でもある。なのでなるべく

警戒は必要なのだが……幸い、コカトリスたちも今は眠くないらしい。


 なぜなら、緑と白のまだら色キノコをはむはむとかじっているからだ。


「ぴよよ……」(これはくちばしで噛めば噛むほど、ほんのり味が出てくる……)

「ぴよっぴ」(気長にもぐもぐ)


 これまでで一番、長く味わっているが……。


「なんだか悪くなさそーぴよね」

「飲み込んではいないけど、ずっとかじっているんだぞ」

「ぴよ。ちなみにとーさまが同じことすると、どうなるぴよ?」


 どうやらディアは俺で危険度をはかっているようだ。まぁ、わかりやすくはあるが。


 ステラが首を振りながら答える。


「かなり美味しくないコーヒーみたいなものです。覚醒効果はありますが、コーヒーほどでもなく……」

「それってコーヒーでよくないか……?」

「コーヒーが手に入らない時代の代用キノコなので……」


 そんなニッチな用途のキノコもあるのか……。意外と幅広い用途に使うんだな、と俺は妙に感心してしまった。

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