674.ぴよと砂ぴよ前編
コカトリスの1日は早いときもある。
「ぴよー……」(もぞもぞ……)
コカトリスによっては夜明けに起きる。
起床時間は前日のお昼寝次第だ。
もちろん、お昼寝をたっぷりすると起床が早くなるだけである。
朝起きたコカトリスが必ずすることがある。
「ぴよっ!」(水浴びだーっ!)
シャワータイムである。
コカトリスにとって水浴びは食事とお昼寝の次くらいに大切なことだ。
どのコカトリスも1日1回以上の水浴びは欠かさない。
ぱしゃぱしゃパシャ……。
「ぴよー……」(はふー……)
水浴び中のコカトリスは意外と静かである。
あまり騒いだりはしない。
じーっと壁を見つめ、思考を整える。
水浴びによってコカトリスの精神は研ぎ澄まされるのだ。
「ぴよ……」(今日はヒールベリーの畑に行って、新鮮なヒールベリーをもぎもぎ食べよっと。そのあとは軽くお昼寝してから、みんなでダンスと野ボールをしなきゃ。夕方には昨日スルーしたキャベツを見に行って、出来栄えが良ければ収穫してご飯にして、それから――)
コカトリスには村の農作物を好きなだけ食べる特権が認められている。
しかしコカトリスも農作物を無計画に食べるわけではない。
「ぴっぴよ……!」(これはまだ熟して……ない!)
コカトリスは自分で手伝った物しか食べることはないのだ。ちゃんと耕作や種まき、苗の選定から育成まで……他の人が育てたのだと認識している。
これにはエルトの側にも大きな利益がある。
農作業は本質的に重労働なのだ。
大玉のキャベツなら2キロになる。
それを地面から持ち上げ、台車に入れる。
それを1日に何十個も繰り返す。そして明日には別の農作物を収穫する。
それはカボチャかも知れないし、高いところに育ったオレンジやヒールベリーかもしれない……。
しかしコカトリスはタフなので疲れ知らずである。
大いに村の経済の助けになっているのだ。
「ぴよぴよ」(はぐはぐ、もぐもぐ)
それはそれとして、コカトリスが一番良い農作物をご飯にするのも、また事実である。
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