656.ぷちっ
「そろそろ決めますよ……!」
ダダダ……ダ……ダダ……!
魔力の波は大きくなっている。ステラは知る由もないが、今地下ではエルぴよたちが必死になって祭壇をポチポチしまくっていた。
「僕にもわかるようになってきた。相手の核は……首の辺りかな」
ナナがじぃっと目を細める。
渦巻く魔力の集まりで、弱点がわかりづらかった砂嵐の竜。
それが砂が不安定に散りゆくことで、攻撃するべき部分もわかってきた。
「そうですねっ、もう少し狙いやすい位置にきてくれると……!」
爪や牙を凌ぐことで打撃は与えられている。
問題は砂嵐の竜の巨体なのだ。その大きさは宮殿ほどもある。
打撃を与えるには、相手が近づいてこないといけない。
ナナがぷよっと前に出る。
「……僕が囮になるよ」
「そんな……!?」
「大丈夫。奴の攻撃は大体見切った。直撃してもダメージにはならない」
ナナは銃をお腹のポケットにしまい、代わりに破壊的な魔力をまとう鞭を取り出した。
「あいつを引きつけて、僕は鞭を当ててみせる。ステラは……まぁ、そのバットで」
ナナがちらっと視線を切る。ステラのバット術の奥深さはナナでもときに想像できないレベルなのだ。
ステラは顔に決意をみなぎらせる。
「着ぐるみナナぴよなら、踏み潰されてもダメージはないでしょうが……。砂地にめり込むことになります」
「……」
「それはもう、めりめりっと……! しかし安心してください。すぐに掘り起こしますので!」
「た、頼んだよ」
おののくナナを見ながら、ステラが熱く頷く。
「任せてください……! ナナぴよの勇姿は忘れません!」
「安全なハズだよ!?」
砂嵐の竜が大口を開けて咆哮する。
ナナはずいずいっと前に出た。
「……まぁ、いいさ。さぁ、僕を――」
ぷちっ。
砂嵐の竜は前脚でナナぴよを踏み潰した。
こんな時だけノータイムの攻撃である。
「ナナぴよー!?」
その瞬間、純白の光が閃いて竜の上半身を焼き尽くす。
どうやらナナは踏み潰されながらも、必死に攻撃しているようだった。
「グォォォォォ!!」
砂嵐の竜がバランスを崩して前のめりになる。
ステラは竜の首元に向かって駆け出したのであった。
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