605.整列

「な、なんだアレは……」


 砂の巨大なドラゴン。

 前世のゲームにあんな敵はいなかった。


 でも魔力が巻き起こっているのは、間違いなくあの砂のドラゴンからだ。


「……わたしも初めて見ますね」

「私もです。砂の精霊の集合体でしょうか……?」


 ステラとレイアも顔を見合わせる。

 砂ぴよの羽はもふり続けているが……。


「ふたりも知らないのか……」

「エルト様もご存知ないのですか……?!」

「あれは見覚えがないな」


 ステラに驚かれた。しかし本当に覚えがない。


「コカ博士も知らないのか?」

「うむ、知らんな」


 ぴこぴこぴこー。横にスライド移動しながらヴィクター兄さんが手を振る。そしてそのまま、砂ぴよの塊をもふり始めた。


「ぴよ! 謎のトカゲぴよね。でっかいトカゲぴよよ……!」

「あれはドラゴンなんだぞ」

「ドラ、ゴン……ぴよ?」


 ディアが改めて、砂のドラゴンを目を細めて見つめる。


「……トカゲぴよね。村の草むらにいるぴよ」

「ウゴ、俺もドラゴン見るの初めて……」

「そうか、ウッドも……」


 でも言われてみると、俺も初めてかもしれない。


「ステラは見たことあるんだろう?」

「ええ、まぁ……羽のついた大きなトカゲですね」

「ぴよ! 理解したぴよ! どらごんはトカゲの仲間ぴよね!」


 ……まぁ、仕方ない。

 俺も前世の知識だけでドラゴンの実物は見てないし。


 徐々に風が強くなり、砂がぱらぱらと舞い始める。


「さぁ、そろそろぴよちゃんも宮殿の中に……!」


 ステラたちはもふるのをやめ、塊をぽんぽんした。


 すると塊の上から――。


「ぴよー!」(起きたぁー!)


 ぴょーんとこんもり塊から立ち上がったコカトリスが、砂へとジャンプする。


 そのあともどんどん塊の上からコカトリスが飛び出していく。


「ぴよよ!」(うぇいくあーっぷ!)

「ぴよよー!」(おめめぱちぱっちー!)


 元気に砂ぴよが並んでいく。

 その数、合計15体。


「ふむふむ、実によい砂ぴよちゃんです……!」

「これでお家に入れるぴよー!」

「ですね、しかし……」


 ステラが砂ドラゴンのほうを向く。

 砂ドラゴンはこちらに一直線に向かってきてるな。速度的にはあと小一時間くらいで直撃か。


 太陽も傾きつつあり、多分夜の間は砂嵐が吹くことになりそうだ。


「……とりあえず宮殿に避難しましょうか」

「ああ、そうしよう。やり過ごすのが吉だな」

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