603.ぴよ合流

 俺たちは宮殿をバタバタと移動する。

 ……が、ステラは速い。どんどん距離を離される。


 と、ステラがバックステップで戻ってきた。


「失礼します!」

「おおっ?!」


 ステラが走りながら俺を肩に担ぐ。


「飛ばします!」

「わ、わかった! ナナ、先に行ってる!」

「いってらー」


 たたたたたっ!!


 階段を駆け下りるたび、着ぐるみがぽよんぽよんと揺れる。

 衝撃吸収機能があるから大丈夫だけれど。


 人をかき分け、角をドリフトしながらステラは走り続ける。あっという間に宮殿の出口へとたどり着いた。


 サボテン畑の隙間から、ステラが砂漠へと鋭い視線を送る。


「あれが砂ぴよちゃんー!!」

「見えたのか?」

「ええ、こんもりとしたぴよちゃんフォームを確かに……!! ウッドも隣にいますね!」


 俺からは何も見えないが、ステラにはしっかり見えているらしい。

 目を細めると……なにかあるような、ないような。砂と同化してわかりづらい。


「では、超特急で進みます!」


 ステラが再びダッシュを決める。

 足場が柔らかめの砂と土だが、ステラは軽快に走り続ける。


 やがて俺にも砂ぴよとウッドたちの姿が見えてきた。こんもり塊のそばにウッドがいる。

 さらにウッドの手の上にディアとマルコシアスが見えた。


 しかし……なんだ、このふわもっこ月見団子は!


「これが砂ぴよ……!?」

「ええ、砂ぴよちゃんですね……! しかし妙です。通常、これは砂嵐への防御態勢のハズ。砂嵐が終わってからもこのままとは……」


 ディアたちはどうやらこんもり塊に話かけているらしい。

 俺たちが近づいても気づかない……いや、さすがにレイアはこっちを向いたが。


「ぴよぴ。その話を詳しくぴよよ!」


 ぺちぺち。

 ディアが塊の一番下からお団子をぺちぺちしている。


「ぴよー」(むこーのほうから、ぼくたち来たんだよー)


 塊からコカトリスの羽がぴょこっと出る。

 ……本当にコカトリスだ。


 そこでディアたちも俺たちに気がついた。

 ぴよっと羽を上げる。


「ぴよ〜」(でも向こうから砂嵐がまた来るから、戻れない〜)

「それは大変ぴよね!」


 ディアがこんもり羽の向こうを見つめる。


 俺もつられて見ると……遥か彼方から、また土煙が舞っていた。

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