528.砂のこと
以下、ステラに砂ぴよを聞いた答えである。
「砂ぴよちゃんとは、何か――。それは極めてレアな習慣を持つぴよちゃんです。ぴよちゃんは通常、土や泥、砂等が羽につくのを好みません。とってもきれい好きですから。海ぴよちゃんも砂浜はスルーなのです。
しかし砂ぴよちゃんは違います。さらさらの乾燥した砂浴びを楽しむぴよちゃんなのです。想像してください――砂遊びを楽しむぴよちゃん達を! とっても可愛いのです……!」
「そうだな……。とっても可愛いだろうな」
コカトリスも土風呂や砂浴びはしない。
でもあのふわもっこが砂浴びをしたら、可愛いのは間違いない。
ちなみに今、ディアは子犬姿のマルコシアスのお腹に顔を埋めていた。
かわいい。
「ぴよー……マルちゃんのお腹は天国ぴよねー」
「わふ。地獄生まれの天国なんだぞ」
「地獄もいいかもぴよねー……」
ウッドは乗り気みたいだな。
「ウゴウゴ、勉強楽しい! 学会楽しみ!」
「俺もそこは大いに興味がある」
この世界での勉強は俺も読書がほとんどだ。
実際に学者の集まりは見たことがない。
どういう風に知識を磨いているかは興味がある。
だが――俺が村の外に出るということは……!
俺はちらっと家のクローゼットに目線を送った。
エルぴよちゃんも再び目覚めるときなのである。
◇
翌日、冒険者ギルドの執務室。
俺はナールとアナリアに学会のことを話した。
「にゃー、精霊学会ですかにゃ……!」
「今年が開催でしたか……。南でやるんですね」
二人の反応には喜びがあるな。良かった。
「博士から手紙をもらってな、ステラの活躍もあったし……」
「学会に招待されるのは名誉なことですにゃ。村のことはご心配ありませんのにゃ」
「精霊は世界中で現れる魔物ですからね。数年おきの学会はかなり盛大なはずですし」
なるほど、期待できそうだな。
「まだ正確な日程はわからないが、行く方向で調整する。また留守にするが……」
「お任せくださいですにゃ!」
「しかと守ります!」
「ありがとう、頼もしい限りだ」
俺は俺で見聞を広め、人脈の拡大も勤しみたい。
新しい技術や知識を仕入れる、住人の呼び込みも大切な仕事だしな。
「ところでこの砂の国なんだが……北に比べると資料が少なくてな。知っていることがあれば教えて欲しいんだが……」
国そのものが小さいため、俺の持っている本も簡素な記述だけだった。
というか、水源ごとに似たような小国が点在していると言ったほうがいいのか。
砂漠の諸国については、7割同じ記述が続いていたのだ。
しかしそれもやむを得ない。
人口で言うと、ザンザスよりも少ないっぽい小国もあるくらいだしな。
「にゃー、あちしも生まれは北ですからにゃ……」
「私も砂漠の諸国は疎いですね……」
ステラの知識は数百年前だから、残念ながら今の風習等はわからないしな……。
ふむ、皆に聞いて回るしかないか。
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